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ロレックス 6062 トリプルカレンダームーンフェイズは、スポーティとエレガンスを究極的に表現している。

ベースラインで宙に浮くロジャー・フェデラー(Roger Federer)か、アダム・スコット(Adam Scott)のバックスイングのようだ。8171と並んで、唯一ムーンフェイズを搭載したヴィンテージロレックスであり、防水オイスターケースに複雑な自動巻きムーブメントが入れられた唯一の例でもある。これまでに作られたロレックスのなかで最も美しい時計であり、実際、私が“美しい”という言葉を使いたいと思った、数少ないロレックスの時計のひとつだ。ロレックスは1950年に、堅牢なテクニカルウォッチメイキングとシンプルで美しいデザインを組み合わせた、スポーツエレガンスという形を完成させた。

金色のサブマリーナーやオイスターポール・ニューマンがもっと話題に上るかもしれないが、6062とその控えめな36mmのオイスターケースは、今でもロレックススーパーコピー時計n級品史上最も収集価値のある腕時計のひとつとしてこっそりと残っている。数百例も世に出ていないため、今後もそれが変わることはないだろう。

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ふたつのジュネーブ・オークションに出品された2本の6062。クリスティーズではピンクゴールド製の“ステッリーネ”が、フィリップスではステンレススティールの個体が出品された。

このオークションシーズン中、おかしなことが起こった。10月から11月にかけて、5本の6062が出品されるのだ。ということは、オークションに出品されるそれぞれの例を見る前に、私のお気に入りのヴィンテージロレックスのリファレンスを深く掘り下げ、その不朽のコレクション性を理解するのに最適なタイミングだということだ。

 この記事のために、私は2000年以降に販売された6062の100以上の例をデータとして蓄積した。そのデータはこちらから閲覧可能だ。これは絶えず更新される資料であり、各リンクをクリックすると、サービスダイヤルの種類、オークションの結果、そして最も重要なこととして、6062がいかに美しいかを知ることができる。

まずロレックス 6062とは?
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 1950年のバーゼルフェアで発表され、1953年まで生産されたロレックス 6062は、36mmのオイスターケースに入ったトリプルカレンダームーンフェイズである。ロレックスがデイトジャストを発表し、複雑機構を試み始めた直後の50年代初頭に誕生した、堅牢かつエレガンスな、奇妙で美しい組み合わせである。まもなくサブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスターなどのシンプルでスポーティな腕時計に注力するようになる。8171と6062のあと、ロレックスは1956年に豪奢なデイデイトを導入し、これがハイエンドのカレンダーモデルとなった。2017年にチェリーニ ムーンフェイズが投入されるまで、ロレックスのムーンフェイズを再び目にすることはなかった。

 スターン・フレール(Stern Frères)社が製作した6062のダイヤルは、外側の日付トラックと曜日・月のウィンドウを備え、トリプルカレンダーの情報を明確に伝える。コンディションがいいものは、曜日・月のウィンドウにまだ鋭い傾斜が残っている。これらのエッジは、ダイヤルが再仕上げされると失われる可能性があるのだ。以下では、6062の6つのダイヤルタイプについて詳しく見ていく。なおムーンフェイズは、パテック フィリップのカレンダーモデルで見られるようなブルーエナメルのシャンルベ仕上げで、モナ・リザのような微笑みを浮かべたムーンマンが描かれている。

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6062、ブルーエナメルのシャンルベ・ムーンフェイズ。

 6062のオイスターケースはイエローゴールド、ピンクゴールド、ステンレススティール製があり、イエローが最も一般的だった。私が調査した100本以上のサンプルのうち、約3分の2はYG製で、残りの生産はPGとSSで均等にわけられている。生産量の見積もりはまちまちだが、オークションに出品された6062はわずか数百本である。この時計の代表的な存在である、トルテラ&サンズ(Tortella & Sons)社の調査結果を引用したカタログ(例えばこちらとこちら)では、YG製が300~600本、PG製が180本と推定されている。高く見積もっても、Ref.6062の全金属の合計生産量は1000本を下回ることになる。

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6062、“バオ・ダイ”。2017年に、500万ドル(当時の相場で約5億6080万円)という記録的な価格で落札された際、詳しく紹介した。

 これまでにオークションで落札された最も高価なロレックスは、Ref.6062である。それは黒い文字盤とダイヤモンドインデックスを特徴とする、“バオ・ダイ”モデルであり、これは1954年にベトナム皇帝がジュネーブに滞在しているなか、王室御用達のショッピングでこれを購入したことに由来する。2002年に初めてこの(トップ)タイトルを獲得し、37万スイスフラン(当時の相場で約2980万円)で落札されたが、2017年に再びこのタイトルを獲得し、506万スイスフラン(当時の相場で約5億7645万円)で販売された(なおポール・ニューマン“のポール・ニューマン・デイトナ”が、その数カ月後にこのタイトルを回収した)。

ロレックス 6062の異なる種類の文字盤
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6062の6つのダイヤルタイプ。Image: Courtesy of Monaco Legend

 6062には6種類のオリジナルダイヤルがあり、それはインデックスで容易に識別できる。イタリア語で“小さな星”を意味するステッリーネというスターダイヤルは2世代ある。ひとつは星の中に夜光が入ったもので(ダイヤルサプライヤーであるスターン社はダイヤルタイプ755と表記している)、もうひとつは星の外側に夜光のドットがあるものだ(ダイヤルタイプ453)。一般的なステッリーネのほかに、ダガー、エクスプローラー(3および9のアラビア数字)、ピラミッド(または“エジプシャン”)、トライアングルのダイヤルタイプがある。

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ステッリーネダイヤルのタイプ1(755)とタイプ2(453)。前者は星のなかに、後者はその周囲に配置された夜光に注目。Images: Christie's and Phillips

 希少なブラックダイヤルを除き、6062にはツートンカラーのシルバーダイヤルが採用されている。文字盤中央にはマットなグレイン仕上げが施され、木目のような質感を与える一方、周辺の日付トラックは滑らかに見える。これらの文字盤は、経年変化とパティーヌによってツートンの性質が協調されているため、50年代に誕生したときは、もっと均一だったのかもしれない。例えば、保存状態のいい6062 “ダークスター”の文字盤では、ふたつの色調を見分けるのは難しい。

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6062のツートーン文字盤で、中央はマットなグレイン仕上げ。

 これは、6062にサービスダイヤルがあるのか、あるいはリファインされたのか(多くはリファインされている)を見分けるひとつの方法である。それがワントーンとして表示される場合は、完全なオリジナルではない可能性が高い。そういえば私たちは過去に、夜光の加工を施した6062ダイヤルを取り上げたことがあるが、超大型の夜光のドットのおかげで識別は簡単だった(思い起こせば、このPGのステッリーネは数年後に再び市場に出回り、見た目も大きく変わって高値で取引されていた)。

具体的な構成よりも、コンディションが重要です。現実には、完璧なコンディションのものがあれば、それはまた別のものなのです。

– レミ・ギルマン(REMI GUILLEMIN)、クリスティーズ・ヨーロッパ時計部門長
 おそらく、サービスダイヤルを見分けるのに最適な判断材料は、6時位置のサインだ。一般的なルールとして、SS製の6062には“Swiss Made”のサインが必須で、金無垢の6062には“Swiss”のみのサインだけでいいが、エクスプローラーダイヤルがある金無垢の6062には、“Swiss Made”と刻印されたものもある。サービスダイヤルには“T Swiss T”とサインされることがあるが、これは6062が製造中止になったずっとあとの60年代に移行した発光素材、トリチウムがダイヤルに使われていることを示している。

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6062のサービス、またはリファインされた文字盤の3つの例。いくつか分かることがある。 いずれもツートン仕上げが失われていること、6時位置に誤ったサイン(T Swiss T、none、“Swiss Made”)があること(金無垢エクスプローラー以外の6062では“Swiss”のみであるべき)、日付の印字が全体的に雑でぞんざいであること。また、各ムーンフェイズを囲むセコンドトラックは、オリジナルの文字盤に見られるものとはすべて異なっている。6062以外のヴィンテージロレックスであっても、リファインされた文字盤を見分けるにはこれらの点に注意する必要がある。

 ピラミッドダイヤルは6種類のなかでは最も希少で、最後のケースシリアル(911,xxxと、942,xxxで始まる)でしか見られなかった。2種類のステッリーネダイヤルが最も一般的なようで、調査対象となった6062のほぼ半数で見られた。エクスプローラーダイヤルは通常、SS製の例に見られるが、いくつかはゴールドケースに入っているものもある(そのなかにPGの個体も3本ある)。

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6062、“ダークスター”のステッリーネダイヤルは、一部の専門家のあいだでは最も保存状態がいいと言われている。

 タイプ1 ステッリーネ(755)は、タイプ2 ステッリーネ(453)よりも一般的なようだ。ダイヤルタイプ755はすべてのケース種類で見つかるが、ダイヤルタイプ453は最初の2種類(シリアル690,xxxと788,xxx)でしか見られない。

rolex 6062 pyramid dial
10月21日、モナコ・レジェンドで26万6500ユーロ(日本円で約4207万5000円)にて落札されたピラミッド、別名“エジプシャン”ダイヤルの6062。

 最も希少な6062はブラックダイヤルで、私は7本を記録した。これらのブラックダイヤルのうち、3つは、バオ・ダイのようなダイヤモンドインデックスを備えていた。この記録的な6062は、ダイヤモンドインデックスが奇数ではなく偶数になっていることで、ほかとは一線を画している。ツートンカラーのシルバーダイヤルとは異なり、ブラックラッカーで統一され、ムーンフェイズもブラックで統一されている。

ゼニス クロノマスター スポーツの“アーロン・ロジャース”限定モデル。

この新しいクロノマスターには、ロジャースのキャリアを彩ってきたカラーがあしらわれている。

頂点に君臨し続けるのに、17年という歳月は長い。NFLのクォーターバックとして4度のMVPに輝いたアーロン・ロジャース(Aaron Rodgers)に聞いてみよう。では158年は? これはゼニスへの質問だ。そして今回、両者がタッグを組んだことで誕生した最新モデル、クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディションが、11月2日から発売される。

ゼニス クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディション
昨日のことのように覚えている。2015年、ゼニススーパーコピー時計n級品グリーンベイ・パッカーズはデトロイトでデトロイト・ライオンズと対戦していた。アーロン・ロジャースが相手陣の39ヤードラインでスナップを取り、空中にボールを運ぶと、解説者は“彼は昨日32歳になったが、これ以上に最高の瞬間があっただろうか?”と言った。タッチダウンを決めて、試合は終了。パッカーズが勝利を勝ち取った。でも最高の瞬間? 勘弁してくれよ、最近のクォーターバックにとって32歳なんてなんら大したことはない。あれから7年、ロジャースはまだ現役を続けている。まあ、そんなところだ。今は残念ながら怪我をしているが、クォーターバックとともに新しい限定モデルを作るというゼニスの計画に支障をきたすほどではない。

同モデルはエル・プリメロ 3600を搭載したスポーツウォッチで、41mm径×13.8mm厚のステンレススティール製ケースを備える。同じ10分の1秒クロノグラフでも、これはセンターのクロノグラフ秒針が10秒で1回転し、6時位置に60分積算計、3時位置に60秒積算計を装備している。そして、元チーム(パッカーズ)と新チーム(ニューヨーク・ジェッツ)の橋渡しをしてくれる色を使うこと以上に、ロジャースの長いキャリアを祝う方法はない。

アーロン・ロジャース選手
グリーンのセラミック製ベゼルと文字盤(および色を合わせた日付窓)に加えて、文字盤には3つのグレーカラーカウンターがある。しかし、少なくともここHODINKEEのチームとしては、クロノマスター スポーツに初めてアラビア数字が入ったことをまずお伝えすべきだろう。しかもただのアラビア数字ではなく、有名なアメフト選手のジャージに描かれているような数字だ。ゼニスオンラインブティックおよび正規販売店にて、1万2800ドル(日本円で約192万9000円)で販売される予定だが、限定250本なので、早く手に入れたい人は最速のポストルート(フィールドの特定ルートを走るアメフト用語)を走ったほうがいいだろう。

我々の考え
新しいクロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディションのグリーンは何色だろうか? アーロン・ロジャースのアメフトを見て育ったという事実はさておき、私が最初に考えたのは色だった。

私が成人したとき、グリーンベイ周辺のレストランでロジャースを見かけた。そのときは夏休みにファストフード店でバイトをしていて、彼と彼のクルーのためにブリトーを作った。当時彼がまだ若いクォーターバックで、グリーンベイという小さな町を特別なものにしようとアピールしていたときだ。さらに家の近くのターゲット(アメリカにある大型ディスカウントストア)で、普通の人が買い物をするようなものを買っているところに出くわしたこともある。しかし彼は普通の人ではない。彼は史上最高のクォーターバックのひとりである。そして、人々はそのことをとても真剣に受け止めている。

ゼニス クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディションのダイヤル
アメフトファンも色を重要視している。これはセラミックベゼルと10分の1秒自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載した、クロノマスタースポーツの新色だ。目を引くのは、ジャージの背番号のように見える夜光を配したアラビア数字と、そう、色だ。この色はロジャースの17年間の活動と、さらにグリーンベイに16年間在籍したというキャリアを包括したものだ(さらに4度のMVPとスーパーボウルも)。文字盤や、特にセラミックベゼルの色を正しく再現するには時間がかかることを知っているし、またロジャースがジェッツに移ってからそれほど時間がたっていないことから、グリーンベイのカラーウェイを新しいチーム用にパッケージし直しただけなのかと気になった。

ゼニス クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディション
そこで私はPhotoshopを開いて、新しいクロノマスター スポーツのダイヤルのカラーサンプルを取り込んだ。ジェッツが“ゴッサムグリーン”(RGBミックスで18,87,64)を使用しているのに対し、パッカーズは“ダークグリーン”(RGBで24,48,40)と呼ばれるカラーを使用していた。私のサンプルから判断すると、文字盤の暗い部分には3,76,47を、ベゼルの明るい部分には46,91,60を使用し、ジェッツが選んだグリーンに最も近いようだった。J-E-T...いや、できない。私のなかのチーズヘッド(グリーンベイ・パッカーズのファンの総称)がつらくなる。

ヒーロー画像にイエローラインを選んだのは、私がパッカーズのファンだからだとか、この記事を読んでいるジェッツファンを煽るためだからというわけではない。この時計が両チームのグリーンのどちらに近いか、頭のなかで考えていたとき、クロノグラフ秒針に黄色のタッチがあることに気づいたからだ。ランボーフィールド(グリーンベイにある競技場)に戻りたいなどの秘密のメッセージや、根深い思いはないと思うが、時計にチーズヘッドのイエローがあるという事実を完全に無視することはできなかった。

アーロン・ロジャース選手と、彼の手首に巻かれたゼニス クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディション
ロジャースにとっては厳しい1年だった。彼はわずか2カ月前、待望のジェッツデビュー戦でアキレス腱を切ったのだ。しかしゼニスはロジャースの忍耐強さを、彼を偉大なアスリートとブランドアンバサダーにしたものとして強調している。今週のジェッツ戦の前に、ロジャースはウォーミングアップとしてパスを投げていたので、その忍耐力が功を奏しているようだ。ただ彼がフィールドに戻るまでにしばらく時間がかかるため、クロノグラフのスタートボタンを押して、彼が再び試合に参加できるのにどれくらいかかるか、計測してみたいと思う。

基本情報
ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース エディション(Chronomaster Sport Aaron Rodgers Edition)
型番: 03.3117.3600/56.M3100

直径: 41mm
厚さ: 13.8mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: グリーンラッカー(3色のグレーインダイヤル)
インデックス: アプライドアラビア数字
夜光: あり、スーパールミノバSLNC1
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: SSブレスレット

ゼニスのCal.エル・プリメロ 3600
ムーブメント情報
キャリバー: エル・プリメロ 3600
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示、10分の1秒クロノグラフ(クロノグラフ秒針は10秒で1回転、6時位置に 60分積算計、3時位置に60秒積算計)
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
追加情報: 透明なサファイア風防

価格 & 発売時期
価格: 1万2800ドル(日本円で約192万9000円)
発売時期: 2023年11月2日より、世界各地のゼニスブティックおよびECサイトにて販売
限定: あり、世界限定250本

偉大な時計メーカーの歴史をお伝えしよう。

今年はウルバン・ヤーゲンセンの誕生から250周年にあたる。現在ウルバン・ヤーゲンセンと呼ばれているブランド(あるいはそのブランド名の由来となったデンマーク人時計職人)についてよく知らない人にとっては、知識を得る絶好の機会である。今週開催される第18回ジュネーブ・オークションと並行して、フィリップスはヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)の貴重なコレクションによるヤーゲンセンの250年を祝した特別展を開催する。11月1日(水)から4日(土)まで、ジュネーブ郊外のラ レゼルヴで25を超えるコレクションが公開される。

スーパーコピー時計n級品ヤーゲンセン一族によるウォッチメイキングの歴史は、18世紀のヨーゲン・ヤーゲンセン(Jørgen Jørgensen)の誕生によって始まる。彼はデンマークの職人たちによる金メッキ加工技術に、新しい理論と実践的な手法をもたらしたと言われている。やがて彼はドイツとスイスに渡った。ヨーゲンの長男であるウルバン・ヤーゲンセンが家名を継承し、一族のみならずデンマーク全土において最も名高い時計師となったのだ。彼はアブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)やフェルディナント・ベルトゥー(Ferdinand Berthoud)らから手ほどきを受け、生涯を通じて時計やマリンクロノメーターを製作していくことになる。

ジョン・アーノルド(John Arnold)によるスプリングデテント脱進機を備えた、ウルバン・ヤーゲンセンの1812年製デッキクロノメーター。8つのうちのひとつ。

やがて、ヤーゲンセンの名は一族から消えていく。そこでピーター・ボームベルガー(Peter Baumberger)とデレク・プラット(Derek Pratt)が、かつての栄光を取り戻すことを目標にこの商標を取得したのである。ボームベルガーによる指揮のもと、プラットはマスターウォッチメーカーとしての卓越した技能を発揮し、息を吹き返したウルバン・ヤーゲンセンのために美しく複雑な時計の製作を開始した。

その後2010 年にボームベルガーが悲劇的な死を遂げると、クロット博士がこのブランドを取得する。オークショニアとして活躍していたころからボームベルガーとプラットを知っていたクロット博士は、1980年代のウルバン・ヤーゲンセン初期の懐中時計を個人的に収集し始めた。そして最終的に、独立時計師のカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏がヤーゲンセンの看板を託されることになった(彼にインタビューした記事はこちら)。

デレク・プラットが手がけたヤーゲンセンのオーバル No.1。仕上げはヴティライネン氏による。このプラチナ製の懐中時計は、ワンミニット フライングトゥールビヨン、ルモントワール、コンスタントフォーススプリングデテントクロノメーター脱進機、ジャンピングセコンド、パワーリザーブインジケーター、温度計、ムーンフェイズを備えている。

クロット博士は長年にわたってヤーゲンセンの時計を収集し続け、ヤーゲンセン家オリジナルの懐中時計と、プラットとボームベルガーによる現代的な作品の両方をコレクションしてきた。そして今回、フィリップスの協力を得て、彼のコレクションから27点を展示することになった。誤解のないように言っておくが、展示物はいずれも今年のジュネーブ・オークションに出品されるものではない(この週末のオークションでは、3点の異なるヤーゲンセンの時計が出品される)。これはヤーゲンセンの時計製造の250周年を記念した特別展示で、メーカーにとって最も重要なコレクターのひとりとその後援者が手がけたものである。

2012年に製作されたウルバン・ヤーゲンセンのパイロットモデル。特許を取得したピボットデテントクロノメーター脱進器を搭載。

フィリップスはジュネーブでの展示会と合わせて、クロット博士が執筆した詳細なブランドヒストリーを含む素晴らしいコレクションカタログを作成した。さらに、クロット博士がヤーゲンセンについて語った3部構成のインタビュービデオもある(こちらから確認できる)。時計、特にブランドの真の研究者であるクロット博士の協力のもと、ヤーゲンセンの時計とその歴史にまつわるおそらく最も包括的なカタログが完成した。

これらはウォッチメイキングにおけるウルバン・ヤーゲンセンの名前の重みと、それが時計の世界に与え続けている影響について、私たちを啓蒙してくれる素晴らしい取り組みだ。