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パテック フィリップのゴールデン・エリプスが再びブレスレット仕様で登場

現在におけるパテック フィリップのゴールデン・エリプスは、主流のパテックコレクションのなかで傍らに置かれている。ドレスウォッチの熱狂的ファン、ヴィンテージ好き、クイーン、ドレイク、コレクタビリティのジョン・リアドン(John Reardon)を除けば、誰もエリプスに注目していない。ただここ数年における、デザイン主導の時計がソーシャルメディア上で大流行していることを考えると、この時計に焦点を当てるのは少し遅すぎたように感じる。

スーパーコピーブランドn級品 代引きエリプスがどこかに行ってしまったわけではない。1968年からカタログにしっかりと掲載されている。ブルー&ゴールドの文字盤と、イエローゴールドの27×32mmケースにブレスレットを組み合わせた最初のモデルは、いくつかの異なる楕円形のバリエーションへと姿を変えてきた。かつてはブレスレット付きの繊細なYG製ドレスウォッチだったが、現代的な形を取り、より大きなサイズに変わっていった。最近では2008年に、サンバーストブルーダイヤルを備えたジャンボプラチナモデル(5738P-001)がエリプス誕生40周年を記念してコレクションに加わり、2018年にはサンバーストエボニーブラックダイヤルを備えたラージローズゴールドモデル(5738R-001)が、そして2021年には50周年記念モデルとしてプラチナにハンドエングレービングを施したRef.5738/51Gが登場した。

Patek Golden Ellipse on bracelet
先月のWatches&Wondersで、パテックはブレスレットのエリプスを発表した。それは、ブランドの職人的な伝統に敬意を表しつつ、時計に新たな魅力を与える完璧な方法であった。しかし、このブレスレットは単に金属細工の長い歴史を示すだけではなく、時計全体の位置付けを変えている。パテックの意図的な動きであろうとなかろうと、このブレスレットは時計をミッドセンチュリーの原点に立ち返らせ、一部のコレクターやディーラー(ソーシャルメディアで強く存在感を示す人たち)がより無名な70年代デザインを求める、現在の欲求と呼応している。ミッドセンチュリーヴィンテージへのこだわりは、“グラマーへの回帰”と呼ぶこともできるし、トレンドサイクルの必然的な次の段階と呼ぶこともできる。それが何であれ、時計コミュニティに浸透しているのだ。その結果、パテックのエリプスは自信を持ってスポットライトを浴びることになった。

シンプルさというすべてにおいて、エリプスはその時代を代表する時計のひとつとなった。パッと見てすぐに分かる形であると同時に、ユニセックスの魅力を持つ、瞬時に認識可能な形状であった。クリーンかつシンプル、対称的なラインで構成され、その成功はほぼ理想的で均整のとれたバランスに基づいていた。ゴールデン・エリプスは、黄金比/黄金分割として知られる“神聖な比率”に基づいている。これは高さ、幅、体積の関係に関する、何世紀も前からある美的な法則であり、数学的に証明された建築的完成度を表現したと言われている。この古代への敬意は、円でも長方形でも楕円でもない独自の形状をもたらした。

Patek Golden Ellipse on bracelet
エリプスのデザインの進化は比較的単純だ。ブレスレット、ストラップ、さまざまな貴金属、ステップドケース、宝石をあしらった装飾、ミニッツトラック、スモールセコンド、さらにはエリプスとノーチラスのハイブリッド(別名ノーチリプス)というのも登場した。それでも、この“神聖な”形状のおかげでパテックだとひと目で分かる。また60年代末に製造されたため、1970年代に流行した大胆なデザインを持つ時計の先駆けとなった。それは50年代と60年代のより堅実なスタイルと、70年代のまったく自由な実験的スタイルのあいだの小さな架け橋となったのである。

今日、時計は現代の消費者の需要に合うようにサイズが大きくなったものの、オリジナルの形に忠実である(と私は聞いている)。この新しいRGモデルは、直径34.5×39.5mm、厚さ5.9mmで製作。文字盤はサンバースト加工のエボニーブラックで、RGをあしらったバトン型インデックスとスリムなシュヴー(非常に細い)タイプの針が採用されている。リューズにはカボションカットのブラックオニキスがセットされ、ブラックのディテールでうまくバランスを取っている。搭載されているのは超薄型ムーブメントのCal.240。無垢のクローズドケースバックで、防水性は30mだ。

Patek Golden Ellipse on bracelet
さて、ここからが最大の魅力だ。非常に緻密なチェーンスタイルの18KRGブレスレットは手作業でひとつひとつ取り付けられ、研磨されたリンクが細かい列で構成されている。彫刻が施された、3段階に調整できるクラスプは取り外しできない。ブレスレットは363個のパーツで構成されており、そのうち300個以上がリンクである。それぞれのリンクは、職人が金のワイヤーからCNCを使用して製作している。パテック フィリップはその歴史を通じて、職人や専門サプライヤーの技術を手作りのメッシュやチェーンブレスレットのバリエーションで紹介してきた。1960年代後半から70年代は、ブランドにとって金属細工の大いなる実験の時期としても際立っている。新しいブレスレットはクラシックチェーンスタイルでつくられているが、ヴィンテージモデルで見られた技術的な欠点を解消し、現代的な仕様でつくられた。ブレスレットの長さは調整可能で、クラスプ(そのカバーにはブレスレットと同様の連続した彫刻モチーフが施されている)には3つの調整ノッチがある。“このブレスレットは、最初期のメッシュブレスレットから直接インスパイアされている”と、コレクタビリティの創設者ジョン・リアドンは説明する。“クラスプそのものが私の心を捉えて離さない。それは1970年代から1980年代のパテック フィリップで見られたものと、ほぼ同じようにつくられている”。

Patek Golden Ellipse on bracelet
新しいエリプスは控えめでありながら適度な華やかさを備え、上質だと感じられる一種のラグジュアリーアイテムである。抑制が効いていながらもインパクトがあるのだ。自分の手首を見つめながら、“パテックを身につけているけど、叫ぶ必要なんてない”とでも言いたくなるような、偏狭な時計知識のプライドを感じさせる時計だ。そしてそれは、静かなクラシックへの回帰という、いまのファッションの方向性と一致している。すっきりとしたブラックエボニーの文字盤は、ミニマリストの夢を形作るものであり、繊細に織られたブレスレットは、まるでスコットランドの奥地の村にある最高級の伝統的カシミアブランドでのみ使われる編み模様の一種ではないかと思うほど、複雑に編み込まれたブレスレットと完璧なコントラストを成している。高級品でありながら、控えめな魅力にあふれているのだ。

Patek Golden Ellipse on bracelet
エリプスが見過ごされているというわけではない。ただヴィンテージのアンダードッグ的栄光を求めるものではないからだ。おそらく、エリプスがあまりにも古典的なので、騒がれる必要すらないのかもしれない。誰も白いボタンダウンのドレスシャツやリーバイス501の復活については話題にしないだろう! 純粋なライン、シンプルな文字盤、そして控えめな美的インパクトを持つ。自分だけのスタイルを持つ人に語りかけるような時計だと思う。既存のワードローブに自然と溶け込み、中心的な存在である必要はない。既存のストラップモデルのほぼ倍の価格だが(税込584万円に対して、新作は税込951万円だ)、ブレスレットは新しいカテゴリーの価格を保証するものである。ドレスウォッチからドレスジュエリーウォッチのハイブリッドへと進化したのだ。それにもかかわらず、エリプスは控えめである。ブレスレットは無理な復刻に見えない完璧なヴィンテージ感を与え、ミッドセンチュリー期に磨き上げられたエレガンスのスタイルを、巧みに前進させているのだ。

パテック フィリップ ゴールデン・エリプス、Ref.5738/1R-001。ローズゴールド製ケース、39.5×34.5mm径、5.9mm厚。全面ポリッシュ仕上げのRG製チェーンスタイルブレスレット。彫金を施したRG製クラスプ(3つの調整ポジション付き)。超薄型自動巻ムーブメント、Cal.240搭載。27.5mm径×2.53mm厚。

“見た目が映える”時計が欲しくなる時もあれば、

先月、グルーベル・フォルセイが発表したナノ・フドロワイアントEWTは、同ブランド史上最高の成果といえるだろう。この時計は、フライングトゥールビヨンを搭載したフドロワイアント(foudroyante)付きの38mmモノプッシャー式クロノグラフである。フランス語の名前がずらりと並ぶこのウェアラブルなケースに、市場で最も優れた仕上げを施したこの時計は、まさに古参のコレクターが熱狂するようなものだ。しかしブランドを新しく知った人々には戸惑いを与えたようだ。彼らが思い描く典型的なグルーベル・フォルセイの時計ではなかったのだ。一方でこれは“グルーベルの頂点”の新たな形、ダブルバランシエール コンヴェクス ブラックカーボンである。これもまた独自の素晴らしさを備えている。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
正直なところ、Geneva Watch Daysで同ブランドとアポイントメントを取った際、私が見たいと思っていたのはまさにこのような時計だった。グルーベル・フォルセイは長年にわたり、伝統的なデザイン言語を採用したウォッチメイキングを行っており(彼らがシンプルに“コレクション”と呼ぶラインだ)。同時に、現代のコレクター向けにスポーティなコレクションとしてコンヴェクスラインを確立している。ほぼ40万ドル(日本円で約6290万円)という価格のこの新作は、ほとんどの人にとっては想像を超える存在だろう。とはいえ、ただ眺めたり、その高額な理由を知るだけでも楽しいものだ。

私は、純粋な驚きと情熱を持って時計に向き合うことが多い。最信頼性の日本リシャールミルスーパーコピー代引き専門店!特にミートアップや街角では滅多に見かけないブランドの製品に出合ったときはなおさらだ。そのためHODINKEE創設以来、業界で多くの変化を見てきたベン(・クライマー)やほかのコレクターたちに、自分の考えが正しいか確認したくなることがよくある。ナノ・フドロワイアントには“古くからいる愛好家”が夢中になっただろう、と私に教えてくれたのはベンだった。最近オフィスで彼とこのブランドについて話したとき、私はコンヴェクスコレクションを“マニア向けリシャール・ミル、知る人ぞ知る選択”と表現してみた。ベンから反論はなかったため、この例えを使い続けることにしよう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
確かにリシャール・ミルはAPルノー・エ・パピ(APRP)に自社内の独立した大規模な研究開発部門を持ち、グルーベル・フォルセイ(年間の製造本数はわずか260本ほど)では到底実現不可能な方法で、技術革新や大量生産を行い、グルーベルとリシャール・ミルは非常に近い価格帯で競合している。この事実が、年月を重ねるなかでグルーベルにこの種のデザインをさらに進化させるきっかけとなり、今に至っているのだろうと推測する。リシャール・ミルはウォッチメイキングの中核に超軽量素材を採用している。そのため、もし“グルーベル・フォルセイはリシャール・ミルに追随しているだけ”と単純化して考えるなら、カーボンコンヴェクスは納得のいく存在だと言えるだろう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
ブラックカーボン製のダブルバランシエール コンヴェクスは、2022年にチタン製の43.5mm×14.35mmケースで初登場したモデルの最新版である。昨年、グルーベル・フォルセイはこの時計をさらに進化させ、幅を1mm削ぎ落としつつ、厚みを維持したままカーボンケースに変更した。このモデルは2023年から2026年にかけて22本限定で展開される。わずかな改良ではあるが、前面と背面を湾曲させ、手首によりフィットするように設計し、文字盤側からの視覚的インパクトを強調したこの時計において重要な意味を持つ。それらすべてを実現するだけでも大したものだが、これをカーボンで実現したことは特筆すべき点だ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
ケースの主要部分のほか、メインプレート、メインブリッジはすべて、樹脂を染み込ませたカーボンシートの層を用いたカーボン製である。これらの層は型に積み重ねて加熱・加圧され、硬化させられる。このケースの曲線を実現するために、グルーベル・フォルセイは通常のカーボンケース成形時に使う圧力の8倍、1平方センチメートルあたり16トンの圧力が必要だったと述べている。さらにより密度の高いケース構造をつくるため、曲率に合わせて繊維を配向させた非常に薄いカーボンの層(1層ごとに1~5ミクロン)が使用された。 

これはグルーベルのデザイン哲学を象徴する、特に際立った特徴のひとつだ。多くのブランドは時計が大きく見えないよう工夫を凝らす方法を模索している。実際多くのブランドが市場向けの適切なサイズバランスをまだみいだせておらず、40mmを無難な選択肢として設定しているのが現状だろう。しかしグルーベルはその逆を行った。9時から3時にかけてのケースの中心線は明らかに厚く、特に見返しリング上のアワーマーカーやミニッツマーカーを見るとその違いが際立っている。また、針もディスプレイに合わせて大きく湾曲しており、パワーリザーブや主ゼンマイ香箱のような文字盤の平坦な部分と比較するとさらに際立って見える。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
最新作のナノを除けば、グルーベル・フォルセイのダブルバランシエールはおそらく、同ブランドで最も機械的に興味深いモデルといえる。ダブルテンプを採用した時計は市場に多数存在するが、ブランドがこのモデルで実現したのは、それぞれのテンプを時計の平面および自然な重力に対して、さらに互いに異なる角度で傾けることだった。

その目的は位置誤差を最小限に抑え、ディファレンシャルを通じて誤差を打ち消すことにある。このディファレンシャルはルモントワール・デガリテとしても機能する。下の画像で確認できるディファレンシャルは2番車によって動力を供給され、3つの同軸車を横方向に組み合わせて構築されている。上下の歯車は、その左右にある4番車のピニオンを駆動している。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
上下の歯車のスポークに取り付けられたスパイラルスプリングとして、正面と背面に配置されたルモントワール・デガリテ(上下の位置)を確認できる。スプリングは4分ごとに巻き上げられ、エネルギーを一気に解放してトルクと振幅を制御する。しかし上の画像でまず目を引くのは、カーボン製の巨大なメインプレートだろう。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
リシャール・ミルにはない、グルーベル特有のこだわりもある。徹底した伝統的な高級仕上げなどがそれだ。それでも、きわめてスポーティでモダン、人目を引く時計を手に入れることができる。ただしこの時計はその最良の例とは言えないかもしれない。地板やその他の大部分をカーボン製にしたことで、伝統的な仕上げ技術を施す余地がほとんど残されていないのだ。時計の背面よりも表面にその技術が多く見られるが、それでも確かに存在している。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
ここで採用されているすべての技術的驚異に対し、最大の疑問点は素材そのものにあるかもしれない。スティール、ゴールド、プラチナといった金属ケースが修理可能であることには、どこか安心感がある(これらはいずれもある程度は修理が可能だからだ)。自動車に詳しい人なら、高級スポーツカーへのカーボン素材の増加が大きなメリットをもたらす一方で、深刻な潜在的欠点も伴うことをご存じだろう。このようなケースが時間の経過にどう耐えるか(特に層の剥がれや剥離など)は、時のみが明らかにするだろう。しかしブランドは、追加の圧力と精密な層構造によって、より耐久性の高い製品を実現していると確信しているようだ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
細部へのこだわりが快適で装着感のよい時計を実現している。私の手首は7.25インチ(約18.4cm)で、42.5mmのケースサイズにぴったり合う。厚みが14mm以上あるケースには奥行きがあるが、それこそが狙いの場合もある。もう一度リシャール・ミルに話を戻すと、RM65-01はオートマティック スプリットセコンド クロノグラフだが、厚みは16.1mmもある。グルーベル・フォルセイの織物加工が施されたラバーストラップと、チタンとカーボンのフォールディングクラスプを使えば、装着していることを忘れるほど快適だ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
もうひとつ気になる点を挙げるとすれば(40万ドル、日本円で約6290万円という値段以外に)、それは読みやすさだ。撮影に与えられる5分から10分の短い時間ではその点を考慮するのを忘れてしまうことが多いと認めざるを得ない。今年レビューした時計のなかでも、特に読みやすさが劣る部類に入る時計だ。もっと早い段階で指摘すべきだったかもしれない。この時計を数日、あるいは1週間身につけていると、長針を素早く読み取れないことで20分から50分のあいだに少し不満を感じ始めるかもしれない。しかし写真は現実を完全に再現しているわけではない。時間を確認するために手首を動かすと、その動きによって光と影が変化し、針が視認しやすくなるのだ。そして忘れてはならないのは、自分が目の前にしているのは、時計愛好家が夢見るような最高にクールな時計だということだ。

Greubel Forsey Double Balancier Convexe Black Carbon
グルーベル・フォルセイ ダブルバランシエール コンヴェクス ブラックカーボン。直径42.5mm、厚さ14.35mmのカーボン複合素材ケース、50m防水。スケルトン文字盤には、時・分・秒針、パワーリザーブインジケーター、ルモントワール・デガリテを備えた傾斜したダブルテンプのムーブメント、約72時間パワーリザーブ。テクスチャーラバーストラップ。価格は35万1000スイスフラン(記事掲載時の価格は約40万ドル、日本円で約6290万円)。

オレンジ、グリーンに続きブルーを纏ったコラボレーション第3弾。

先週、ウブロはアーティストでデザイナーでもあるサミュエル・ロス(Samuel Ross)氏と提携したトゥールビヨンウォッチのシリーズ第3弾となるビッグ・バン トゥールビヨン カーボン SR_A by サミュエル・ロスを発表した。ロス氏はファッションブランドであるア・コールド・ウォール(A-Cold-Wall*)や自身のデザインスタジオ、SR_Aの創設者として知られており、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の最初のデザインアシスタントを務めた経歴も持つ。ロス氏とウブロの関係の始まりは、2019年に遡る。この年にロス氏はウブロ デザイン プライズを受賞している。この賞はデザイン界で若く才能ある人物を発掘することを目的に、伝説的なジャン-クロード・ビバー(Jean-Claude Biver)氏が2015年に立ち上げた取り組みの一環である。

それから数年後の2022年、最信頼性の日本ウブロスーパーコピー代金引換を激安専門店!とサミュエル・ロス氏の最初のコラボレーションウォッチが発表された。ウブロのデザインのなかでもとりわけエキセントリックかつ爆発的なデザインで、この第1弾はオレンジに彩られたインパクトのある作品だった。この限定モデルは50本のみ生産され、瞬く間に完売した。翌年には第2弾が登場。チタンを素材とし、鮮やかなグリーンがストラップにアクセントとして施された。そして今年、その第3弾となるモデルではブルーが基調色となり、さらにフロスト仕上げのグレーのカーボン素材が採用されている。

First SR_A Collab
Second SR_A Collab
デザインの大部分は過去2モデルとほぼ同じである。このシリーズはロス氏とウブロが繰り返し試行錯誤し、洗練を重ねた結果生まれたものだ。そのため、外観においては初期コンセプトの形状がほぼそのまま保たれている。ケース径は44mm、厚さは13.75mmであり、インテグレーテッド型でクイックチェンジも可能なラバーストラップの際立ったデザインが手首を強調する。しかし、その見た目に反して非常に軽量である点も特徴的だ。

closeup of the carbon
ベゼルやムーブメントプレートなどの部品は異なる仕上げが施されたチタンで作られている一方、外装のシェル部分は前述のカーボン素材で構成されている。この素材の選択はデザインに非常にマッチしており、ケースの各所に独自のメタリックパターンを表現している。文字盤(その大部分が欠如しているが)には、自社製のHUB6035トゥールビヨンムーブメントが見られ、12時位置にマイクロローター、6時位置にトゥールビヨンケージが配置されている。時刻表示用のインデックスはサファイア製のセクションに支えられ、あたかも浮いているかのような印象を与える。また、ケースやバックプレートにはハニカム模様が施されており、このデザインはラバーストラップにも引き継がれている。さらにストラップのバックル部分には新たなデザインが採用されている点も特筆すべきポイントである。

ビッグ・バン トゥールビヨン カーボン SR_A by サミュエル・ロスは限定50本となっており、価格は1959万1000円(税込)である。

我々の考え
2022年、サミュエル・ロス氏による最初のトゥールビヨンウォッチが発表された時のことを今でも覚えている。ソーホーに設置されたポップアップストアはHODINKEEオフィスからわずか1ブロックの距離で、ランチの帰り道に偶然立ち寄った。外観は遠くからでもひと目でわかるほど鮮やかなオレンジ色に覆われ、入口の上部にはブランド名とデザイナーの名前が大きく掲げられていた。店内に入ると、オレンジ1色の部屋の中央でその時計がガラスケースに飾られて台座の上に置かれていた。時計に近づくにつれ、従来のビッグ・バンやクラシック・フュージョンとはまったく異なる新鮮な感覚を覚えた。それはまるでコンセプトカーを見るような体験だった。

my photo of this watch
マイアミでこの新作を直接チェックすることができた。クールだった。

マイアミで開催されたアートバーゼル2024で、ビッグ・バン トゥールビヨン カーボン SR_A by サミュエル・ロスはふさわしい形式で発表された。このイベントに同行する機会があり、サミュエル・ロス氏と直接話をすることで、このパートナーシップについてより深く理解しようと試みた。ウブロは長期的なパートナーシップやコラボレーションにおいて定評があるブランドだ。なかでも村上 隆氏との関係は、間違いなく最も有名で成功した例のひとつであり、それについては同僚のマライカも同意するところだろう。しかしサミュエル・ロス氏の名前は、それとは異なり、よりニッチでメインストリームから外れた領域に属している。ロス氏とウブロの関係は非常に相互的かつ想像以上に密接であるようだ。ロス氏はスイスのチームと共にデザインプロセスのすべての段階に関与してきたと語る。私はロンドンを拠点とするデザイナーがコンセプトやスケッチをスイスに送信し、現地のチームがそれを引き継ぐという光景を、ある意味で無邪気に想像していた。しかし実際にはロス氏がかなりの時間をスイスで費やし、デザインに深く関与しているという非常に異なる現実があった。

ロス氏はナイキやアップル(Beatsのプロダクトデザインを手がけた)といったパートナーとの仕事を通じて、ウブロとのコラボレーションでどのようにアイデアを忠実に具現化するかを学んだという。どの部分に力を入れ、どこで妥協するべきか、そのバランス感覚を身につけたそうだ。より実務的な観点では、最初の時計を製作する段階でコンセプトを明確に定義したことで、以降のリソースを改良や洗練に割り当てられるようになった。彼は“3.0”で採用された新しいバックルのデザインについて、多くの人には気づかれないだろうが、形状、寸法、フォントの配置をわずかに変更しただけでもメーカーとしては新しい(そしておそらく高価な)工具が必要になったと語っている。この話から、多くの大手時計ブランドがブレスレットやバックルのようなパーツの改良に時間を要する理由が理解できる。理論的には簡単に思えるが、最終的に収支のバランスシート上でその正当性を証明することが、プロセスの停滞を招く原因なのかもしれない。

the SR_A 3.0 with box
caseeback
tourbillon closeup
さて、時計に話を戻そう。先述したようにSR_Aとのコラボレーションは、ウブロにとってコンセプトカーのような存在だ。自社製トゥールビヨンムーブメントはブランドの前衛的なコンセプトを体現するのに適しており、このケースデザインのアバンギャルドな性質にも非常によく合っている。3バージョン目となる今回でも、デザインは依然として新鮮さを保っていると感じるし、ロス氏がブランドと共に新しいアイデアや素材を探求している点も、この時計の魅力のひとつだ。これらの試みが将来的にはより手ごろなモデルにも応用されることを期待している。

ウブロの最大の強みのひとつは、多くの時計コレクターに批判されることがあっても自分たちのやり方を貫き、業界内で独自性を保っている点だろう。この時計もその哲学を体現している。もし私が今15万ドル(日本円で約2300万円)を持っていたとしても、この時計を購入するかと聞かれれば答えはNOだ。しかしそれは重要ではない。これまでのふたつのモデルは完売しており、今回のバージョンも同様の結果になるだろう。時計ブランドが時計を売ることを責められる筋合いはないのだ。

基本情報
side shot of watch
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: ビッグ・バン トゥールビヨン カーボン SR_A by サミュエル・ロス
型番: 428.NQ.0100.RX.SRA24

直径: 44mm
厚さ: 13.75mm
ケース素材: チタン、フロスト加工を施したグレーカーボン
文字盤色: グレー、およびサファイア
インデックス: アプライド
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ダークブルーのラバーストラップ(交換用としてブラックのラバーストラップ)

ムーブメント情報
キャリバー: 自社製キャリバー HUB6035
機能: 時・分表示、トゥールビヨン、マイクロローター
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 26

価格 & 発売時期
価格: 1951万1000円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 世界限定50本

カシオが時計事業を開始してから50周年にあたる2024年。

これを記念して今年は数々のモデルがリリースされてきたが、それらに並ぶプロダクトとして初代G-SHOCKの復刻作となるDW-5000Rの発売がアナウンスされた。これまでにも初号機のリバイバル作品は折に触れて限定でリリースされてきたが、本作は従来の復刻モデルとはコンセプトが異なっている。本企画の目的は、これまでスポット的にアピールしていたG-SHOCKの歴史やクリエイティビティを新旧問わず多くのファンに届けること。そのため約40年後の現代において、オリジナルのデザインのみならず1980年代当時の雰囲気やストーリーを忠実に再現することが求められた。

G-SHOCK初号機の精神を表現するうえで重視されたのが、DW-5000Rの生産体制だ。1983年に発売されたDW-5000Cは、カシオのマザーファクトリーである山形カシオで製造されていた。今回の企画においてはこうした背景も考慮され、DW-5000Rの生産は山形カシオで行うことが決定された。現在の樹脂製モデルの多くは中国を含むアジアでの生産が中心であるなか、MADE IN JAPANを強調することで単なるデザイン復刻にとどまらない明確なストーリー性を与えたのだ。さらに本作では、初号機に倣ってレンガパターンの文字盤下部に“JAPAN”の文字を記している。これは従来の初号機復刻モデルには見られなかったものだ。最信頼性の日本スーパーコピー時計代引き専門店!こうした表記を復活させている点からも、オリジナルを忠実に再現しながら日本発のブランドであることを伝えていこうとする、カシオの強い意志が感じられる。

生産体制に明確なコンセプトを立ち上げたカシオだったが、製品化までの実際の道のりは困難を極めたという。近年のG-SHOCKは設計図を3Dデータで作成、保管しているが、初号機が開発された1980年代は当然のことながらデザインは手書きで行われていた。そこでまずは手書きの設計図を3Dデータとして起こし、これをもとに試作品が作られた。しかしカシオが保有している初号機と比較したときに、明らかなサイズの違いを感じたという。それもそのはず、当時は金型の寸法も現在ほどの精度は出せず、量産するうえでの許容値も今ほど厳格ではなかった。設計図を厳密にデータ化してもまったく同じ製品にはならないと考えたカシオは、当時の図面を参考にしつつも、基本的にはオリジナルモデルの実物を設計図に落とし込むという通常とは真逆のプロセスで設計を進めていった。

1980年代に登場したG-SHOCKの初代モデル、DW-5000C。

DW-5000RはSS製のインナーケース、およびケースバックを備える。

さらに復刻のハードルを高めたのが、耐衝撃性や防水性などG-SHOCKを製品化するうえで不可欠となっている評価規格だ。もちろん初号機が開発された当時もこうした基準は設けられていたものの、現在の評価項目はなんと100以上にも及んでいる。各モデルはこれらのなかから設定された項目をクリアし、G-SHOCKとしての信頼性を担保する必要があるのだ。今回の復刻モデルも、現在の基準を踏まえたうえでのオリジナルの再現が求められた。そのためには内部のパーツや素材も当時と同じというわけにはいかず、現在の基準に合ったアップデートが検討された。結果としてケース幅はオリジナルより0.7mm拡大した42.3mmとなったが、これも実物から起こした設計図を単純にスケールアップしたわけではない。新規のサイズに合わせてオリジナルが持つ各部の形状を微調整し、外観のバランスを修正するなど、再設計に近いプロセスを辿ったという。

またDW-5000Rでは初号機にも見られたSS製のセンターケースを採用しているだけではなく、核となる耐衝撃構造もG-SHOCKの生みの親である伊部菊雄氏が考案した中空構造(モジュールを小さな点で支えつつ、その周囲にわずかな空間を設けている)を取り入れている。これらはオリジナルを継承した設計だが、一方でモジュールとセンターケースのあいだに挟まっている緩衝パーツは素材から見直し、この緩衝パーツで押さえる位置も変更するなど、現在の基準をクリアするための微細なアップデートがいくつも加えられている。

現代的なアップデートはこれ以外にも確認できる。なかでも代表的なものが、バイオマスプラスチックを採用したアウターベゼルとストラップだ。近年カシオは環境負荷低減への取り組みを推進しており、それが本作にも反映されている。またバックライトにはLEDが使われ、暗所での視認性をさらに向上させているが、それは電池の持続時間を従来の約2年から約5年へと延伸させることにもつながった。一方で、オリジナルをより忠実に再現するべくカシオが重視したのが、ベゼルの造形だ。2001年のDW-5000-1以降、復刻モデルはベゼル上下の“PROTECTION”と“G-SHOCK”の表記部分が1段高くなる凸形状を取り入れていた。この形状は時計が落下した際にガラス面を保護する耐衝撃構造の一部ではあったのだが、コアなファンからはオリジナルと同様のフラット面が求められていたという。DW-5000Rではケースのサイズアップによってフラット面を実現しつつ耐衝撃の確保にも成功。ついに、その造形をよりオリジナルに近づけることに成功した。微細な違いに見えるかもしれないが、これにより近代のG-SHOCKが持つスポーティさがやや抑えられ、どこかクラシックでノスタルジックな風貌に仕上がっている。

しかもDW-5000Rの登場に関連し、カシオからはさらなるニュースがアナウンスされた。それが初号機のカラーを落とし込んだモデルの同時リリースだ。 “ICONIC STYLES”とネーミングされたそのラインナップはDW-5600RL、DW-6900RL、GA-110RL、GA-2100RLというG-SHOCKを象徴する4モデル。ブラックを基調としながら、レッド、イエローをアクセントに添えるお馴染みのカラーコンビネーションを用いることで、脈々と受け継がれてきた耐衝撃性能や、それを製品化させるための情熱を現在に伝える役割を担っている。

DW-5000Rは確かにこれまでの復刻版よりもオリジナルに忠実に仕上げられた、熱心なファンにとっては1980年代当時のノスタルジーを強く感じさせるモデルだ。そのうえで素材や機能面は現在にふさわしい内容にアップデートされているのだから、単なる復刻ではなく“初号機の外装をまとった現代版ORIGIN”と表現するのがふさわしい作品かもしれない。しかも本作はカシオウォッチ誕生50周年の記念すべき年に発売されるにも関わらず、限定ではなくレギュラーモデルのひとつとして展開される。カシオウォッチのターニングポイントであり、時計史における金字塔でもあるG-SHOCK──その独創性を改めて実感するには、絶好の機会になる。

日本きってのファッショニスタは時計選びも独特の感性を持つ。

海外でのコミュニケーションアイテムだったり、自身の憧れを掴んだり。好きというパッションやサービス精神溢れる人柄を表しているようなコレクションたちだ。

ファッションキュレーター・小木“POGGY”基史(以下、ポギー)。セレクトショップ在籍時に培った、確かな見識とポップカルチャーやヴィンテージウェアを巧みにミックスするユニークなスタイルで、日本のみならず世界中から注目を浴びる人物だ。そんな彼が、実は最近時計にも熱を上げているという話を聞いた。長年、自身のベーシックにしてきたものはG-SHOCKで、所有する数は50本以上にものぼるという。

ポギー氏にとって時計は、自分のコーディネートに合わせて個性を足したり引いたりするものであると同時に、自分にとっての憧れを投影するアイテムだ。永遠のアイコン、エルヴィス・プレスリーに抱いた思いを込めたベンチュラやキングマイダスには一貫性があり、彼のスタイルに絶妙なマッチングを見せる。下積み時代に抱いた強い思いのもとで集めたというカルティエは、ウォッチコレクティングにおいて誰もが共感できるエピソードだろう。

そしてやはりポギー氏に聞きたいのは、なぜ今日その時計を選ぶのか? どういう意図で着こなしに時計というアクセントを加えているのか?ということだ。ポギー氏の、ときにチャーミングな時計選びにおけるエッセンシャルをぜひ楽しんでほしい。

G-SHOCK G-5600-1 with カーハート

この“懐中時計”スタイルのG-SHOCKはHODINKEEでも取り上げたことがあるため、最信頼性の日本スーパーコピー時計代引き専門店!知っている人も多いはずだ。10年以上は所有しているという本機は、ベーシックなG-5600-1のバンドを外し、ヨーロッパの蚤の市(パリのクルリニャンクール、もしくはロンドンのポートベローとのこと)で見つけたヴィンテージのチェーンやカーハートの1900年代初頭のチャーム(ウォッチフォブ)でコーディネートされている。ファッションのコレクションシーズン、海外に出向くことも多いポギー氏は、外国の人に合う際にどうしたら笑ってもらえるか、コミュニケーションが盛り上がるかという問いを大切にする。この“懐中G-SHOCK”は、かなりの確率で周りの笑顔を引き出すことのできる鉄板アイテムになったそうだ。日本の時計でコミュニケーションが生まれることもうれしいと頬を緩める。なお、こうした変わったアレンジを加える場合は、定番アイテムでと考えているとのこと。

元々、時計のことをファッションの一部と捉えているポギー氏は、スーツスタイルにG-SHOCKをどうやって合わせようと長年悩んでいた。コーディネートを捻っていくことが好きで“ガチャガチャしている”と自ら語るオリジナルのスタイルには、シンプルな時計を選ぶことが多いなか、どうやってもスーツにG-SHOCKはしっくりこなかったそう。

カーハートのダブルニーにドレスウォッチ、など対極なものを合わせる楽しみを見出していたなか、長年の課題としていたスーツスタイル×G-SHOCK。そんな折に、ニューヨークのアーティストであるトム・サックスの作品からインスパイアされる。カシオ製の時計本体にストラップをつけたようなその作品をもとに懐中スタイルを生み出し、以来、スリーピースのウエストコートに着けたり、フラワーホールにあしらったりと活用しているそうだ。

G-SHOCK フロッグマン DW-6300 “NO-SHOCK”

50本以上のG-SHOCKからポギー氏が厳選したのは、一瞬それだとわからないフロッグマンだ。古着やヴィンテージアイテムも愛する彼は、時計でも敢えてボロボロに使い込まれたような質感のものを自分のファッションに合わせられないかと考えた。ナイキのエアフォース1やアディダスのスタンスミスのように、少し履いて汚れた状態を通り越してボロボロに使い込まれたからこそ出るいい味、それをG-SHOCKにも求めた末に発見したのが本機だ。通常DW-6300 フロッグマンは、アシンメトリーな形状の樹脂製ケースカバーで覆われているが、この1本は加水分解でカバーが壊れかけた状態のものをヤフーオークションで探したそうだ。“ちょっとふざけているかもしれないけど”と前置きしながら、この時計を“NO-SHOCK”と呼んでいる、と教えてくれたポギー氏は、着こなし同様チャーミングだ。

こうしたアイテムは時計に限らず常にアンテナを張って探しているというポギー氏は、その背景にセレクトショップ出身であることが大きいと語る。国やカテゴリ、時間軸、カルチャーのミックスで成り立つセレクトショップの概念は日本独自のもので、ポギー氏もそれらをすべて見た上で自分流にまとめたいと考えている。その自分のテイストにマッチさせる時計として、一生G-SHOCKでもいい、と考えた時期もあったというが、最近はそのフィールドを高級時計にも踏み出したようだ。

自分にとってG-SHOCKはアニメとかカラオケみたいなものっていうか。高校生の頃から今でも好きな、気楽に着けられるもの

– 小木“POGGY”基史
ハミルトン ベンチュラ“POGGYTHEMAN”

ポギー氏が高級時計への関心を高めるきっかけとなったのがこのハミルトンだ。彼が中〜高校生の頃、影響を受けたカルチャーが凝縮されたようなこの1本は、エルヴィス・プレスリーやジェームズ・ディーンへの憧れを投影し、さらに故郷・札幌時代に地元で足繁く通った古着屋の先輩たちが着けていていて羨望の的だったベンチュラをベースとしている。

本機はポギー氏のプレスリー好きを知ったハミルトンが、別注企画のオファーをしたことで実現。前身を黒で統一しながら自身が手掛けるキュレーションブランド「POGGYTHEMAN」のロゴがケースバックに。ストラップ裏面にピンクを配したのは、プレスリーがデビュー当時に地元で初めて仕立てたピンクのスーツに由来するという。

プレスリーの登場によってメンズファッションに生じた変化は大きかったとポギー氏は熱っぽく語る。それ以前は、大人のためのスーツか若者向けの服しかなかったが、プレスリーによって若者のためのスーツなど保守的だったメンズの洋服に新たな潮流が生まれたそうだ。そんなプレスリーが身につけたのが、左右非対称のデザインを持ったベンチュラやキング マイダス。それらを着けて入浴したりと個性的すぎるエピソードに引かれ、先のスーツの裏地のエピソードと合わせてポギー氏だけの時計として結実した。

クレドール ロコモティブ Ref.GCCR999

やっぱりブレスレットが欲しい…!

元来より凝り性であるというポギー氏は、興味を持ったことは気づくととことんのめり込んで調べてしまうという。現在の愛車であるポルシェ 911(タイプ996)の前に乗っていた、ホンダ シティ カブリオレがきっかけとなってクルマのデザインについて掘り下げるうちに、ピニンファリーナなど著名なカーデザイナーの存在を知る。1979年に発表されたこの元祖ロコモティブは、ご存知のとおりジェラルド・ジェンタによるものだが、クルマと同様に機械式時計のデザインに関心を抱いて調べるうちに最初に知ったデザイナーが彼であることから、長年焦がれた1本なのだそうだ。ジェンタによるデザインは高級時計の世界に多いものの、そうではなくてもっと親しみがもてるモデルを探し求めた結果、ロコモティブにたどり着いた。

手に入れたきっかけは、自身の思いを共有していた友人がある日この時計を購入し、しばらくして“自分がしているよりポギーに似合うから”と誕生日ギフトとして譲り受けたという。ただ、今思うことは、ブレスレットあってのロコモティブだろう!ということらしい。もし余分にブレスレットをお持ちの方がいたら、ぜひHODINKEE Japanかポギー氏に直接知らせて欲しい。

ロレックス チェリーニ キングマイダス

G-SHOCKから始まった時計探しの旅は、ポギー氏にとってはいつ終わるとも知れないものだ。ベンチュラも、ロコモティブのときもこの1本で十分だ、と考えたもののその後も旅は続いていく。

ポギー氏にとってのスター、プレスリーにまつわる時計はベンチュラに留まらない。彼がゴールドブレスレットのキングマイダスを着用した画像を今でも見ることができるが、ベンチュラを経てポギー氏がたどり着いたのは必然だったように思う。このモデルは、チェリーニコレクションの傘の下に入ったのち、レザーストラップ仕様で販売された19xx年当時ぐらいのもの。幾何学的な五角形フォルムとブルーの文字盤が好相性で、ドレッシーな装いに加えるスパイスとして着用しているようだ。

フルオリジナルではない個体だが、ロレックスによる正規の修理履歴もありポギー氏としては十分に納得して手にした1本だと語る。

自分の人生とかストーリーに合ってないものを身につけると、急に格好よくないものに見えてしまうものが時計。すごく小さな面積にその人の個性や生き方がギュッと凝縮される。だからこそ安易に選べない。難しいけれど楽しいもの

– 小木“POGGY”基史
カルティエ サントス ロンド

非常にキレイな状態に保たれたサントス ロンドは、20代の頃、セレクトショップのプレス担当をしていた時代にポギー氏が初めて手に入れた機械式時計だ。当時の先輩バイヤーに連れられ、ネペンテスの代表 清水慶三氏と初対面した際、彼の手元に見つけたサントスのボルドー色の文字盤に猛烈な憧れを抱いたという。20年以上前には、カジュアルな格好にカルティエを着けている人はほとんど見なかったとポギー氏は振り返る。

当時は予算的にも手が出なく、同じものは断念しつつも手の届くカルティエのバイカラーモデルをと買い求めたのがこのサントス ロンドだったそうだ。長年愛用するうちブレスレットが破損してしまい、最近になってメンテナンスに出したところ、一部現行の新品のような仕様に変わったこのブレスレットに代わって戻ってきたという。セカンダリーで機械式時計が買えるほど代金がかかったそうだが、自分の原点のようなものでこれからも着け続けたいと語ってくれた。

カルティエ サントス カレ

そう、この1本はポギー氏が20代のころから憧れていたという、あの清水氏がしていたサントスに近いものだ。懇意にしているというショップ・ECW SHOTOがオープンした際、入荷しているのを確認してすぐさまキープをして入手したそう。ロレックスでは一般的になっているスパイダーダイヤルやトロピカルなど、経年変化による味の出たカルティエはないかと探していたところ巡り合った。

サントス カレは、当時の新たな潮流であったブレスレット付き高級時計の流れのなかで、カルティエがエベルとのパートナーシップの元で1978年に開発したもの。見事にモダナイズされながら初代サントスの意匠を残した本作は、アイコニックなビスをベゼルとブレスレットに配し、ローマ数字とレイルウェイの文字盤はほぼそのまま採用した。ポギー氏が手にしたものは1980年代の個体で、サントス カレとしては限定品に近いモデルだ。同時期にカルティエスーパーコピー時計販売おすすめ優良サイトの主要なコレクションであったマスト タンクでも見られたモノトーンのラッカー文字盤を用いた中期以降のこのサントス カレは、ツートンモデルをメインとしたラグジュアリーなコレクションであったため珍しいSS仕様だ。

なお、このバーガンディの他“ゴースト”と呼ばれるグレーの単色ダイヤルも存在する。サントス カレのラッカーダイヤルは、割合的には通常ダイヤルモデルが100に対し1本見つかるかどうか、という程度の生産数のようだ。

デニムも愛好するポギー氏は、このサントスを自分で糊付けをして味出しをしたヴィンテージ・リーバイスのようだと語る。クルマを運転している自分の手元にさした日差しによって文字盤のひび割れが照らされた瞬間、まるでキレイな夕日を見たような、なんとも言えない感動を楽しんでいるという。身に着けて楽しむ、を信条としているポギー氏はこの時計で本当に打ち止めだと考えていた。しかしその後、既にカルティエのトーチュをコレクションに加えて新たな沼に入り込んでいるようだったため、またどこかの機会でお会いできたらと考えている。

グランドセイコー史上初となる機械式複雑時計は、今回新たなコンセプトのもとにさらに20本が追加製造された。

グランドセイコーは2年前に、おそらく多くの人がとっくの昔にブランドが達成しているものだと思っていたであろうこと、すなわち初の機械式コンプリケーションウォッチの発表に踏み切った。グランドセイコーは、機械式時計製造における卓越性、最高級の仕上げ、スプリングドライブムーブメントが象徴する創造性、そして独創的なデザインを持ちながら、2022年まで創業から62年ものあいだ機械式のコンプリケーションモデル(GMTを除く)を製造していなかったのだ。しかし彼らは、Kodoをもって見事に成し遂げてみせた。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
グランドセイコーの初代コンプリケーションモデルことRef.SLGT003は、コンスタントフォース機構を備えたトゥールビヨンという、まさにコンセプトカーのような時計であった。日本語で心拍を意味する“鼓動(Kodo)”と名付けられたこの時計は、グランドセイコーのすべてを凝縮していた。また、このモデルはGPHGでクロノメトリー賞を受賞している。光と影を巧みに表現した針やインデックスに加え、高度に磨き上げられた表面とダークな色調で仕上げられたオリジナルKodoの開発秘話についてはジョン・ビューズが取材している。4400万円(税込)、20本限定のこの時計は、懐の温かい大口顧客だけに許された時計であった。しかしこの時計は、ブランドのコレクションに単にコンプリケーションモデルが加わったという以上のものを意味していた。そしていま再び、リシャール ミルスーパーコピーn級品より明るく、しかしそれに勝るとも劣らない大胆なフォルムで我々の前に姿を現した。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
新しいグランドセイコーのKodo "薄明” Ref.SLGT005は、前作のスタイルを継承している。同じくコンスタントフォース(定力装置)機構が付いたトゥールビヨンムーブメントを搭載したこの時計は、少し明るい配色になったとはいえ、実に見慣れた外観をしている。前回のKodoと同様にインナーケースとベゼルはプラチナ950製で、外側のケースサイドとベゼルはブリリアントハードチタン製だ。しかし今回は、“薄明”のテーマを際立たせるシルバートーン仕上げが施されている。

グランドセイコーの担当者によると、前作のKodo発表時はすぐにオーデマ ピゲやリシャール・ミルといったブランドのVIPたちからの問い合わせが殺到したというが、その理由も納得できる。4400万円(税込)という価格であるために、顧客は単に希少性だけでなく、それ以上のものを求めるケースが少なくないだろう。グランドセイコーのコレクションにはこれまでKodoのようなモデルはなかったが、オーデマ ピゲやリシャール・ミル(あるいはランゲのようなブランド)が得意とする奥深さ、複雑さ、オープンワークというテーマが息づいている。ランゲのダトグラフを眺めていると、そのムーブメントに吸い込まれてしまいそうになる。オーデマ ピゲやリシャール・ミルのオープンワークを目にしたとき、視覚的な複雑さが高級感を醸し出し、ブランドが誇る技術的な側面を際立たせているように感じられる。“薄明”のテーマに便乗すると、Kodoはグランドセイコーの新時代の幕開けであり、私たちがグランドセイコーに望む長きにわたるブランドの方向性を示すものである。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
私は前作のKodoを直接見ることはできなかったが、今回の“薄明”は前作とほとんど違いがないにもかかわらず、その第2弾として私を驚嘆させた。さながらWatches&Wonders 2022における巡礼地のひとつであるかのように、前作のKodoについては絶対に見るべき作品であるとダニーが紹介記事のなかで述べている。その衝撃は、決して第1弾に劣るものではなかった。Watches&Wondersでの(セイコーの)最後の回にジェームズとベンと一緒に参加したのだが、ふたりともKodoを見るのが目的だったらしい。私が手早く写真を撮ったあとで輪になって時計を受け渡し、おのおのが時間をかけて鑑賞しながら、グランドセイコーの新時代の息吹に感嘆していた。さらに写真を撮るためにもう1度時計を返してもらったのだが、自分が繰り返し同じ部位に目を奪われていることに気づいた。複雑なビジュアルと革新的な機構を備えたこの時計は、正面から見るとシンプルですっきりとしたデザインにまとめられている。時を告げる針、パワーリザーブインジケーター、トゥールビヨンなどあなたの視線は瞬間的に次々とこれらの要素を巡り、そしてそれを繰り返すのだ。

裏面を見て、私はさらに感動した。表側からはムーブメントが完全に宙に浮いているように見えるが、裏側を見てみると、メインプレートに相当量の細工が残されていることがわかる。より劇的な効果を得るためにどのパーツを取り外すべきかを、グランドセイコーがいかに慎重に決定したかが分かる。前面のスケルトン化されたブリッジは、クレドール 叡智IIなどに見られるような技巧的な仕上げの巧みさを示している。一方で裏面からは、並列して作動する二重香箱など、グランドセイコーの64年にわたる時計技術の革新が感じられる。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
見た目の美しさだけでなく、グランドセイコーがもっとも称賛されるべきはこの点である。基本的にはゼンマイが巻き戻されるとリザーブが枯渇するにつれてトルクが減少し、振動子への動力供給と振幅は低下し、その結果として時計の振動は速くなる。グランドセイコーは、この問題をコンスタントフォースで解決している。コンスタントフォースとは、トゥールビヨン脱進機に直接エネルギーを伝えるために、そのトルクを均等にする緩衝作用を持つ機構である。

コンスタントフォースとトゥールビヨンを組み合わせた時計としてはF.P.ジュルヌのトゥールビヨン・スヴランが有名であり、これ自体はそれほど目新しいことではないように聞こえるかもしれない。ジョージ・ダニエルズをはじめこのコンセプトを採用したモデルはほかにもあるが、ジュルヌの偉業がどれほど名を馳せているかはともかく、このふたつの組み合わせがどれほど希有なものであるかは言うまでもない。裏側と表側の両面から見えるようにトゥールビヨンは入れ子構造になっており、トゥールビヨン用のケージとコンスタントフォース用のケージを備えている。その両方が、吊り下げられた大きな上部構造のなかに収められている。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
トゥールビヨンが1秒間に8回前進する一方でコンスタントフォースのケージはエネルギーを蓄積し、1秒間に1回動作して振動を伝え、同時にデッドビート・インジケーターの役割も果たしている。ご覧のように、コンスタントフォースのケージアームにはパープルのジュエルがあしらわれている(ムーブメントのほかのジュエルはブルーサファイアで、“薄明”というコンセプトを踏襲したユニークな選択である)。また、ムーブメントの裏側には“Sixteenth Note Feel”というエングレービングが施されているのがお分かりいただけるだろう。これは、ムーブメントの2万8800振動/時の振動数と、Cal.9ST1がメトロノームを彷彿とさせる一定のリズムで同期するパルスを備えていることに由来する。たいていのコンスタントフォースは完璧に同期しているわけではない。これは、ブランドの功績を讃えるちょっとしたおまけみたいなものだ。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
Kodoはグランドセイコーが誇る最高峰のケース仕上げのすべてを備えている。ザラツ研磨による鏡面仕上げの部分もあればサテン仕上げの部分もあり、光と影のドラマを生み出している。ブリリアントハードチタンはもはやKodoだけのものではなくなってしまった(今年グランドセイコーからリリースされた私のお気に入りのひとつ、ハイビートの手巻きドレスウォッチにもこの素晴らしい素材が使用されている)が、今回この素材が使用されたことで、グランドセイコーが過去に持ち得なかった技巧的で未来的なデザインが強調されている。白漆を何層にも塗り重ねたホワイトのレザーストラップとの組み合わせにより、グランドセイコーらしい洗練されたパッケージに仕上がった。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
ディテールに話を戻すと、この時計は正面側8時位置にパワーリザーブインジケーターを備えている。フロントとリアに施した面取りと高級仕上げは、アトリエ銀座のチームによるものだ。また、文字盤側のデザインが完全にオープンな割には、驚くほど視認性が高い。そう、サイズは直径43.8mm×厚さ12.9mmとかなり大きいが、ケースのほぼ端から端まで届くムーブメントとディスプレイを備えた時計の視覚的なインパクトにマッチしている。チタンを使用しているため、手首に装着してもそれほどかさばる感じもない(また10気圧防水を備えているため、必ずしも防水性と複雑さの二者択一を迫られることはない)。しかし視覚的なインパクトは絶大で、これほど複雑な時計がこれ以上小型になる(あるいは小さく見せられる)とは誰も思わないだろう。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
前作のKodoと同様に新しい“薄明”は20本限定となっており、2024年12月以降順次納品を予定している。しかしながら、グランドセイコーのチームは今作を10年にわたる研究開発期間を讃えるものとして、総生産本数はわずか40本にとどまると教えてくれた。グランドセイコーはドレスウォッチ、GMT、クロノグラフなどの分野で、ジャパニーズモダンデザインとクラシックなスタイルを融合させたヒット作を世に送り出してきた。しかし、“Kodo”ほどその実力を存分に発揮したモデルはない。グランドセイコーから近い将来、このダイナミックで未来的なスタイルの続編が発表されることを期待している。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
グランドセイコー Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン Ref.SLGT005の詳細については、こちらの紹介記事か、グランドセイコーのウェブサイトをご覧ください。

クリスティーズはシューマッハの時計9点をオークションに出品した。

ときには、時計自体ではなく、その裏にある物語が重要になることがある。ポール・ニューマンの“ポール・ニューマン”デイトナは、そのモデルの最高の例というわけではなかったが、彼の“ポール・ニューマン”だったから高名となったのだ。そして今週行われるクリスティーズ・ジュネーブオークションで出品されるある個体のように、その両方の要素を持つ時計が現れることもある。というのもクリスティーズが販売しているのは、単に伝説的な人物が所有していた時計というだけではない。レジェンド的人物がオーダーし、また別のレジェンド的人物が製作した時計を、ウブロスーパーコピーn級品 代引きそのスポーツにおける史上最高の人物、ミハエル・シューマッハを称えるための贈り物として出品しているのだ。

Michael Schumacher's Watches
今週末のクリスティーズのオークションは、実際には“ミハエル・シューマッハの所有物を含むレアウォッチ(Rare Watches Including the Property of Michael Schumacher)”と題され、F.P.ジュルヌの“ルテニウムコレクション”の全セット(99セット中92番目のセット)が同オークションに出品される(セット用のボックスも含む)。推定価格は最低でも15万スイスフラン(日本円で約2562万円)から。クロノメーター・レゾナンスやトゥールビヨンモデルに至っては最大50万スイスフラン(日本円で約8541万円)に達する見込みである。またデイトナも2本あり、ひとつは交換されたベゼルと追加の“ポール・ニューマン”ダイヤルを持つ金無垢のRef.6241で、もうひとつはRef.6262の“ポール・ニューマン”である。しかし、これらは量産品だ。ストーリーの観点から見る場合、真のハイライトはオーデマ ピゲとF.P.ジュルヌのふたつのユニークピースである。

AP Michael Schumacher
ホワイトゴールドのオーデマ ピゲ ロイヤル オーク クロノグラフは2003年製で、推定価格は15万~25万スイスフラン(日本円で約2565万~4280万円)だ。6時位置のインダイヤルにはアイコニックな“跳ね馬”エンブレム、9時位置にある12時間積算計にはフェラーリの赤と黄色のヘルメットがデザインされている。時計は長年(誇らしげに)使われてきたようで着用感があり、ベゼルには傷が見られる(世界チャンピオンでもロイヤル オークの傷は避けられない)。特に3時位置のインダイヤルと裏蓋には、特別なカスタマイズが施されている。

AP Michael Schumacher
3時位置のインダイヤルの中央には6つの星と数字の“1”があしらわれており、これはシューマッハがオーダーするまでに獲得した6度のF1ワールド・チャンピオンシップに対して敬意を表したものだ。時計の裏側には、シューマッハがチームベネトンで優勝した1994年と1995年、フェラーリで四連覇を達成した2000年と2003年を囲む月桂冠があしらわれている。“Royal Oak”の刻印の下には、当時スクーデリア・フェラーリのレース部門のゼネラルマネージャーであったジャン・トッドから、シューマッハへのクリスマスの贈り物として心温まるメッセージ、“J. Todt pour M. Schumacher, Noel 2003”が刻まれている。

AP Michael Schumacher
翌年、トッドはシューマッハの当時の記録である7度目のワールド・チャンピオンを、今度はF.P.ジュルヌのユニークな作品で祝した。2004年に製造されたプラチナ製のこのユニークなヴァガボンダージュ1は、この時計が実際に市販される2年前(2006年)につくられたもののため、現存するヴァガボンダージュの初期モデルのひとつとなる。さらに推定価格は驚異の100万~200万スイスフラン(日本円で約1億7085万~3億4180万円)と、非常に高額だ。

FPJ Michael Schumacher
ヴァガボンダージュはF.P.ジュルヌにとって、長い歴史を持つ興味深い時計である。1997年、フランソワ=ポール・ジュルヌは“カルペ・ディエム”と呼ばれるユニークな時計を製作した。それは中央に見えるテンプを中心に、ジャンピングアワーとワンダリングミニッツを備えた自動巻きムーブメントを搭載していた。2003年までに、彼はICMチャリティーオークションのためにローズゴールド、イエローゴールド、WGの3種類の金属で、同じワンダリングアワー表示とセンターテンプを備えた3本のユニークピースを製作し、それをヴァガボンダージュと名付けた。この時計は最終的に3つのシリーズで製造され(最後のシリーズは2017年に発表)、その後生産終了となった。

FPJ Michael Schumacher
この裏にもジャン・トッドからミハエル・シューマッハへのクリスマスプレゼントとしての刻印がある。文字盤は前モデルよりも明らかに“フェラーリ”らしい特徴を持っている。F.P.ジュルヌ(彼とブランドの両方)はトッドと密接な関係にあり、2022年のクリスティーズにて200万スイスフラン(当時の相場で約2億4555万円)近くで落札されたこのサンティグラフのように、ユニークな作品を製作してきた。同じくフェラーリレッドが、サンティグラフの量産モデルにも施されることになる。

ここでは、通常の12個のインデックスではなく10個のインデックス、フェラーリのエンブレム、シューマッハのレーシングヘルメットの写真風プリント、彼の7度のワールド・チャンピオンを示す7つのV(ビクトリー)エンブレムなど、フェラーリのデザインが顕著に見られる。このデザインで一番目を引くのは、独特の低解像度なドットマトリックススタイルの文字盤でレトロな雰囲気を醸し出している点だ。どちらの時計も、今週末のセール開始時には、F1コレクターにとって素晴らしい一品となるだろう。

ロンジン ミニ ドルチェヴィータシリーズを拡充し、

ロンジンはシグネチャーラインの“ドルチェヴィータ”を小型化した。1990年代後半からコレクションの定番となっているこのシリーズは、長方形のケースシェイプと1927年の遺産を取り入れたデザインが特徴だ。ちょうど1週間前、私たちはこのブランドの愛らしいミニチュア版ドルチェヴィータの最新作を目にした。この度新しくデザインされたダブル(ナッパーレザー)ストラップ(数色から選択可能)が展開され、シルバーのフランケ(細かいリブ)ダイヤルが追加された。

Longines Mini DolceVita
ミニ ドルチェヴィータコレクションの人気モデルと同様に、ミニファミリーに新たに加わったこのモデルも、21.5mm×29mmのステンレスケース製レクタンギュラーケースに収められており、好みに応じてダイヤモンドの装飾が施されたバージョンを選ぶことができる。昨年リリースされた定番の“コスモ”ダイヤルを持つミニ ドルチェヴィータは、アール・デコのルーツを捨てたとまでは言わないが、ロレックス スーパーコピーn級品アール・デコ時代のデザインを著しく合理化し、よりミニマルなものに仕上げている。

Longines Mini DolceVita
それと対照的に、シルバーフランケの装飾がされた文字盤は、細長く伸びたローマ数字、波打つギヨシェスタイルの加工、焼き入れされたブルーの針、6時位置に追加されたスモールセコンドのインダイヤルなど、アール・デコの華麗さをより強調している。超小型であることを考えれば、それぞれにクォーツムーブメントが搭載されていることも驚きではないだろう。さらにミニ ドルチェヴィータの各モデルは30m防水となっている。

Longines Mini DolceVita
ロンジンというと、まず航空史の歴史を連想しがちだが、このブランドは馬術の世界とも長年つながりがある。新しいダブルレザーストラップのデザインにはその影響が見られる。例えば、ストラップの穴に沿ってホットプレスで印刷された1から6までの番号は、鐙(あぶみ)革を連想させるものだ。ストラップを広げたときの形は、おしゃれでスタイリッシュな厩舎にあるサドルや、ほかの革製品と一緒に並べてもなじむような印象を与える。

我々の考え
特にニュートラルな色のストラップオプションと組み合わせると、ミニ ドルチェヴィータは、どんなフォーマルな場でも着用できるリトルブラックドレスのような時計だという印象を受ける。ほとんど何にでも気軽に合わせることができるし、たいていうまくいく。そして、一般的にクォーツムーブメントに対する懸念はこのコミュニティ内で流布しているが、ときには女性が巻き上げや時刻合わせを気にせずにサッと時計をつけたいだけということもあるだろう。そう、私は最近、時計愛好家の仲間から、彼女は機械式よりもクォーツムーブメントを好むことが多いと聞いたことさえある。人それぞれだ。

Longines Mini DolceVita
正直に言うと、ダブルストラップ全体のコンセプトに最初はあまり確信が持てなかった。一般的に、変化を求めるときは揃いのブレスレットかシンプルな黒のレザーストラップが定番だ。新しいミニ ドルチェヴィータが正式にリリースされる前に試す機会があったのだが、実際手首につけたときには疑念はすっかり消え去った。ロンジンはストラップのデザインで実に多くのことをうまくやっている。最初に少し苦労したが、ストラップを自分で簡単につけることができ、ゆるめに締めると独特のカフのような効果が得られた。手首には3層のレザーが巻かれているように見えるため、“ダブルストラップ”という言葉も少し語弊があるが、通常のダブルストラップよりもエッジの効いたクールさを感じさせる。

Longines Mini DolceVita
また、ミニ ドルチェヴィータの価格も魅力的であることは確かだ。時計を1日中見ていると、何が手頃で何がそうでないのか、基準がずれることは否めない。とはいえ24万5300円(ダイヤモンドなしのバージョン)をわずかに上回る価格は、現在の時計市場の状況やこのモデルの多用途性を考慮してもそれほど高価すぎるとは感じない。ダブルストラップの新鮮さが薄れた場合でも、いつでもブレスレットに交換して基本に立ち戻ることができるのだ。

基本情報
Longines Mini DolceVita
ブランド: ロンジン(Longines)
モデル名: ミニ ドルチェヴィータ(Mini DolceVita)

直径: 21.5mm×29mm
厚さ: 6.75mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: シルバー
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ナッパーレザーストラップ(2023年に登場したアリゲーターストラップ、ステンレススティール製ブレスレットのモデルも展開)

ムーブメント情報
キャリバー: L178(クォーツ)

価格 & 発売時期
価格: 通常モデルは24万5300円、ダイヤモンドがセットされたモデルは56万1000円(ともに税込)
発売時期: 発売中

カルティエ ロンドンによるただの退屈なモデルか?

ロンドンを拠点とするオークションハウス、ウォッチズ・オブ・ナイツブリッジが、非常に希少な18Kイエローゴールドのカルティエ ロンドン マキシ ロンドを出品する。

いま、カルティエのニッチなアーカイブにまつわる話題がホットだ。ヴィンテージ カルティエのオークション相場が上昇しているのは、ソーシャルメディア上の盛り上がりや、カルティエのやや過激な(しかし間違いなく成功している)マーケティング戦略、セレブリティの起用によるところが大きいだろう。そして言うまでもなく、2022年のペブルや昨年のタンク ノルマルのように本格的なコレクター向けのヴィンテージ復刻も改めて注目を浴びている。企業戦略とオーガニックなマーケティングが絡み合い、どこからが本物のブームなのか、最近はよく分からなくなっているようにも思う。ここ数年、セレブリティや大物コレクターがこの時計メーカーを崇拝するようになったことで、カルティエがそのスタイルを取り戻しつつあるのは確かだろう。

Cartier London Maxi Ronde
一方でベン・クライマーは、カルティエスーパーコピーn級品優良通販店「クラッシュは、いまやありふれたものになった」と淡々と主張している。彼が言いたいのは、セレブリティや大金持ちが天文学的な価格の入手困難な(ヴィンテージ)時計や、(現行品でも)注文が困難な時計を身につけている姿があちこちに氾濫しているということだろう。まあ、彼がロンドン クラッシュを例外的なものとしてカウントしていることは付け加えておこう。しかしクラッシュ的なシェイプは飽和状態に達している。コレクターの領分をはるかに超えて、時代の潮流になりつつあるのだ。一部の人間には耐え難いことかもしれないことかもしれないが、私もそうだ!

突然、誰もがクラッシュとは何かを理解し、メゾンのその他のヒット商品についても少しずつ知られるところとなった。カルティエのクラッシュがトリクルダウン効果(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなるとする経済理論)を発揮していることは、最近のオークション結果を見れば明らかだ。昨シーズン、ジュネーブのクリスティーズではクッサン「バンブー」が5万スイスフラン(当時のレートで約840万円)で、カルティエ ロンドンの「ダイス」が13万8600スイスフラン(当時のレートで約2330万円)で落札された。これらのモデルは、事前の見積額を大幅に上回って着地している。そして、今週末のジュネーブ・オークションにも注目すべきだろう。同オークションに出品される特別なカルティエ ロンドンのマキシ ロンドの見積額は4万〜9万英ポンド(日本円で約775万6000〜1745万円)に設定されている。また、レディースサイズのバンブーも同時に出品されており、そちらに興味があれば見積額は6000~1万2000英ポンド(日本円で約116万〜233万円)となっている。

Cartier vintage watches
左:70年代のカルティエ クッサン「バンブー」。右: 1972年のカルティエ ロンドン「ダイス」。

カルティエ ロンドンは一般的に、極めて実験的なイメージが強い。1965年から1973年までパリとニューヨークはカルティエの直営ではなかったが、ジャン=ジャック・カルティエ(Jean-Jacques Cartier)とカルティエ ロンドンのデザイナーであるルパート・エマーソン(Rupert Emmerson)の才能と野心が結集し、デカゴナル、オクタゴナル、マキシ オーバル、マキシ ロンド、ペブル、ロザンジュ、ツインストラップなど風変わりでエキセントリックなモデルが次々に生み出された。

カルティエ ロンドンの最後の年である1972年に製作されたこのマキシ ロンドは、イエローゴールド製としては現時点で2本目、ロンドン製のマキシ ロンドとしては全4本のうちの1本となっている(ホワイトゴールド製は2本存在する)。ジャガー・ルクルト製の手巻きキャリバー(P838)を搭載し、ケース径は35.2mmで厚さ6.55mm。ケースバックにはジャック・カルティエを意味する“JC”の刻印と1972年製であることを示すロンドンのホールマーク、そしてカルティエ ロンドン独自のストックナンバー“1334”が刻印されている。

Cartier London Maxi Ronde caseback
マキシ ロンドは、カルティエ ロンドンが設立したライト&デイヴィス(W&D)の工房で製造されている。 これは戦後の贅沢税により、カルティエ パリ製の人気モデルのロンドンへの輸入が禁止されたことをうけての対応である。W&Dでは主に、カルティエ ロンドンが販売する腕時計を製作していた。1950年ごろ彼らはタンク ノルマルやその他おなじみのモデルを製造しており、ボンドストリートのブティックでカルティエ ロンドンを象徴するようなケースデザインの時計を販売するようになったのは1965年から66年にかけてのことだった。

Cartier London Maxi Ronde on wrist
マキシ ロンドはロンドン カルティエのほかのモデルほど難解ではなく、外観だけを見ればやや控えめな印象だ。「タンク以外のロンドン カルティエがマーケットに受け入れられるかどうかは、非常に興味深いところです」と語るのは、The Keystoneの創設者であり、オンラインオークションプラットフォーム Loupe Thisの共同創設者でもあるジャスティン・グルーエンバーグ(Justin Gruenberg)氏だ。「私にとっては、写真で見るよりも実際に手首の乗せたほうがよく見える、素晴らしい時計です」。グルーエンバーグ氏が購入した最初のカルティエ ロンドンのひとつである1970年製のロンドン デカゴンを、最近私も試着してみた。私たちはふたりとも、この時計がある種の不格好な美しさを有し、グルーエンバーグ氏が私に教えてくれたように“Jolie Laide(フランス語で、美人ではないが愛嬌のある女性)”であることに賛同した。マキシ ロンドとは正反対の、トレンドを感じさせるルックだ。

これはきっと、見た目の美しさではなく、希少性について語るべき時計なのだろう。華やかさにはいささか欠けるマキシ ロンドの生産数はごくわずかで、「このロンドンウォッチが“ハンドメイド”で製造されていたという事実を物語っている」と、HODINKEE専属のカルティエ研究家であるトニー・トレイナは説明する(私がSlackで彼に意見を求めたあと)。「よく考えてみると、“退屈な”丸型のカルティエというのはヴィンテージカタログのなかでも比較的珍しく(そうそう、ロンドのことね)、その事実だけでもおもしろい。それに古いジャガー・ルクルトのムーブメントはいつ巻き上げても素晴らしいものだね」。トレイナに対して、これはクラッシュのブームに対する非常にまっとうな鎮静剤かもしれないと冗談を言った私に、彼は「確かに“ああ、クラッシュやその他もろもろも楽しかったけど、60年代はもう終わったんだ。ラウンドウォッチに戻ろう”って感じだね」と返した。

Cartier London Maxi Ronde
次に何が起こるかは誰にもわからないが、カルティエ熱はすぐに冷める気配はない。 それはブランドがポップカルチャーに長きにわたり与え続けてきた影響の証明である。それこそ王侯貴族から、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)、タイラー・ザ・クリエイター(Tyler the Creator)までだ。時計界のマニアたちはカルティエの人気はピークに達したと言うだろう。だが、このハイプが一風変わったルックスから来るものなのか、それとも希少性が需要を生むというもっと予測しやすいシナリオに帰結するものなのかは、興味深いところである。

アメリカのウォッチメイキングにスポットライトを当てるコーネル・ウォッチ・カンパニーとは?

アメリカの老舗時計ブランドを復活させるなら、時計職人のローランド・マーフィー(Roland Murphy)氏と提携するのはいいスタートだ。ペンシルバニア州ランカスターを拠点とするこの時計職人は、多くの人にとってのアメリカのウォッチメイキングの象徴的な存在である。そのため、シカゴ出身のジョン・ウォーレン(John Warren)氏が19世紀に故郷で創業した懐中時計メーカーであるコーネル・ウォッチ・カンパニーを再興させたいと決めたとき、マーフィー氏に連絡を取ることにした。

ポール・コーネル(Paul Cornell)は1870年にコーネル・ウォッチ・カンパニーを設立し、ニューアーク・ウォッチ・カンパニーやボストン・ウォッチ・カンパニーといったほかの偉大なアメリカンウォッチメーカーから直接系譜を受け継いでいた。IWCの共同創設者のひとりは、経営難に陥っていたコーネルを助けるためにシャフハウゼンからはるばるシカゴまでやってくるなど、IWCとの関連性もある。オーデマ・ピゲ スーパーコピー代引きしかし残念ながら、それはうまくいかなかった。シカゴ大火と金融危機が重なって、コーネルは1870年代半ばに急速に閉鎖したのだ。

ウォーレン氏がコーネルに夢中になったのは、シカゴの大学で古いアメリカ製の懐中時計を集め始めたときだ。彼は特にコーネルのムーブメントに注目し、その構造や石数、さらにはサインに見られる変化に注目した。彼はコーネルの歴史に魅了され、また地元とのつながりに気づいたとき、その名前を復活させることを決意した。

ウォーレン氏は当初、マーフィー氏にコーネルの古い懐中時計からインスパイアされたカスタム時計を家族や友人向けにつくってもらうよう依頼した。彼は(マーフィー氏のブランドである)RGMのカスタマイズプログラムを使って、コーネルの懐中時計の美しいエナメル文字盤とムーブメントにインスパイアされた時計をデザインしようと考えていたのだ。しかし、マーフィー氏と協力をするうちに、ウォーレン氏は単なる友人や家族向けのプロジェクト以上のものになり得ると感じ、コーネル・ウォッチ・カンパニー再興へと生まれ変わった。

このコラボレーションから生まれたのが、オリジナルのコーネル懐中時計へのオマージュを込めたコーネル 1870 CEである。インスピレーションは、黒いローマ数字とブルースティール針を持つ白のグラン フー エナメル文字盤から着想を得た。そのエナメルはシカゴの新雪のようにきれいで豊かである。またウォーレン氏は、アンティークのコーネルの懐中時計も貸してくれたが、それと比べても類似性は明らかであるが、1870 CEには、RGMにおける現代の技術の粋が込められている。

この時計はマーフィー氏による新しいケースデザインが採用されている。316LSS製で、サイズは39mm径×11.3mm厚(ケース部分だけだと10mm)、ラグからラグまでは48mmである。ケースはていねいに作られており、主にサテン仕上げだが、ラグの面取りとベゼルはポリッシュ仕上げされている。ラグは少し下向きにカーブしていて、ケースの装着感を向上させている。厚く感じるわけではないが、1870 CEがもう少し薄ければ、薄くてエレガントなドレスウォッチとして際立っていただろう。

サファイア製のシースルーバックから見えるのは、1870 CEに搭載される、シュワルツ・エティエンヌ製ASE 200ムーブメントのマイクロローターだ。RGMによってさらに手作業で仕上げ、テスト、調整されている。これは約86時間のパワーリザーブ、フィリップスターミナルカーブを持つらせん状のヒゲゼンマイを備え、2万1600振動/時で時を刻む、技術的に堅実なムーブメントだ。

私はアメリカ中西部で育ち、10年以上にわたりシカゴを拠点としてきたため、コーネルの物語には共感しやすい。エルジン、イリノイ、ロックフォードといった名前は、文字盤上で見慣れている。週末に行われるフリーマーケットやガレージセールでは、インビクタの時計を超えるほど山積みになっているのを見る。それ以上に、文字盤を飾る何の変哲もないアメリカのメインストリートの町々は、私にとって実生活の場所であり、トウモロコシ畑が広がるフライオーバー地方に点在する抽象的な場所ではない。きっとスイスの人々も、文字盤にジュネーブやル・サンティエと書かれているのを見たとき、同じように感じるのだろう。ぜひ、その価値を当たり前だと思わないようにしよう!

さらに見るべきもの: アメリカ時計大紀行

アメリカの時計製造の歴史については、こちらの全4回にわたるシリーズをご覧あれ。

しかし、ウォッチメイキングにおいて感傷だけでは限界がある。1870 CEは現代の“市場”によって埋もれ、忘れられてしまった美しいアメリカの懐中時計からインスピレーションを得てていねいにつくられた、きれいに身につけられる時計である。この時代のアメリカンウォッチメイキングにインスピレーションを求めたのはコーネルが初めてではないが、現代的かつ思慮深い方法で、これほど美的な要素を取り入れている時計はほかにはない。多くのほかの試みは、懐中時計のアイデアを無理に小さな時計に押し込むことで、どこかぎこちなく感じられるのだ。

コーネルにとって、この1870 CEプロジェクトはアメリカのウォッチメイキングに光を当てるための、より大きな取り組みの始まりにすぎないことだ。例えば、販売された各時計のうち500ドルが、ニューヨーク時計協会の奨学金プログラムに寄付され、時計職人の育成に使われる予定である。

cornell watch chicago 1870 CE
ウォーレン氏と私は、アメリカの時計メーカー、技術者、部品メーカーの名簿を作成して編集し、既存の、そして将来有望なアメリカの時計会社を支援しようという、コーネルの広範な取り組みについて何度か話したことがある。1800年代後半から1900年代初頭にかけて、アメリカは世界のどの国よりも多くの時計を製造しており、その多くのプロセスが現在時計業界を支配する日本やスイスのメーカーの基礎となっている。

cornell watch chicago 1870 CE
重要なのは、アメリカを時計の大量生産の地に戻し、最大のメーカーと競争させることではなく(それは実用的でも現実的でもない)、アメリカのウォッチメイキングを合理的に支援することだ。ほかの時計職人からも同様の声を聞いたが、国内には時計製造に応用できる製造技術や職人技が豊富にある。しかし、それらを特定し、促進するのは難しい。

マーフィー氏とのコラボレーションによって始動したコーネル・ウォッチ・カンパニーは、アメリカのウォッチメイキングの過去、現在、そして願わくば輝かしい未来の最高の部分を浮き彫りにする時計をつくり上げたのである。

コーネル 1870 CEの今年の初回生産分10本は抽選で割り当てられ、までコーネルの公式サイトから応募可能です(2024年5月現在は締切)。抽選に参加する際の費用や、購入の義務はありません。1870 CEは限定モデルではありませんが、毎年の生産数は限られます。

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