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フィリップス・ニューヨークがユニークピースのフィリップ・デュフォー

機会が許せば、現地まで赴いて見に行きたい時計が何本かある。その多くがフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)氏による作品であり、彼は間違いなくこの時代を代表する偉大な時計師のひとりとして歴史に名を刻むだろう。そしてそのなかでももっとも希少なグラン・プチ・ソヌリが存在する。私は幸運にも、これまでに製造された8本のうち3本を見ることができた。そのすべてが驚くべき時計であり、挑戦的で歴史に残る複雑機構の最高峰を初めて小型化したものである。しかもその3本はきわめて珍しく、公の場で目にすることができたのはそのうち2本だけだ。

Dufour Grande Sonnerie
デュフォーのグラン・プチ・ソヌリ。1時から2時位置のチャプターリングが白く抜けてしまっているのは、ガラスのフレアがひどかったため。

フィリップスが今週末(本国掲載時点)にニューヨークで開催するオークションに出品されるNo.12がそれだ。デュフォーのもっとも生産数の少ない時計のひとつであり、そのなかでも特に希少なバージョンでユニークな仕様を持つグラン・プチ・ソヌリである。まさに“希少”の極みといえるだろう。この時計は、デュフォー氏が伝説たるゆえんであるその驚異的な仕上げを披露するオープンサファイアダイヤル、ローズゴールドのアウタートラック、マルーンカラーに焼き入れされた針が特徴である。極上スーパーコピーNランク代金引換専門店そら~またこのモデルは最近まで知られておらず、かなり遅れて市場に登場した。

Dufour Sonnerie
フィリップスに出品されたNo.7“ソヌリ”。

1992年に発表されたフィリップ・デュフォーのグラン・プチ・ソヌリは、現代のウォッチメイキングにおけるもっとも重要な功績のひとつと言えるだろう。そもそも当時2歳だった私が時計を買えるはずもないため、もしこの主張に異論があるなら大目に見てほしいところだ。1992年当時に、デュフォー氏はほとんど誰も夢見ることのできないものをつくっていた。そして彼は、それまで誰も成し得なかったレベルの時計を完成させ、それ以来、誰もが目指す基準を打ち立てた。

The No. 7 Sonnerie at Phillips
この仕上げを見てほしい。

機構に詳しくない読者のために補足すると、グラン・プチ・ソヌリとはチャイムを鳴らす時計のことで、正時ごと、または正時と15分ごとにチャイムを鳴らす機能を持ち(リクエストに応じて現在時刻を鳴らすことも可能)、さらにサイレントモードも備えている。この時計はふたつの輪列を備えており、ひとつは時刻表示用、もうひとつはチャイム機構用で、チャイムの動力を引き出す際に振り角や精度が低下するのを防いでいる。現在の複雑時計の分野を見渡しても、デュフォー氏が32年前に達成したことを再現できるブランドはほんのひと握りしか存在しない。またデュフォー氏は、オーデマ ピゲからパテック、IWCまで、誰もが複雑機構で互いを凌駕しようと競い合った時代にこれを成し遂げたのだ。

グラン・ソヌリを名乗れるブランドはほんのわずかであり、製造や組み立てを行えるブランドとなると、おそらく両手で数えられる程度だろう。昨年、ル・サンティエにあるブルガリのマニュファクチュールを訪れた際、私はソヌリ工房にいる4人の時計師のうちのひとりと話をする機会があった。そこで私は、ソヌリに携わる職人が世界にどれほどいるのか、ブランドではなく個々の人の数について尋ねてみた。彼は天井を見上げながら、自分が知っている名前を数え始めた。そして「10人くらいですかね」と、答えというよりはむしろ質問のように呟いた。すごい。

Photo Courtesy Phillips
デュフォー氏の協力のおかげで、フィリップスは彼が手がけた8本のソヌリを記録した表を提供してくれた。No.2とNo.8(どちらもホワイトゴールド製)が同じダイヤルデザインかどうかについては未解決の問題があるが(1本は未公開)、デュフォー作のソヌリはどれもユニークピースであることはおそらく間違いないだろう。1992年に発表されたあと、デュフォー氏は1999年にきわめてモダンなサファイアクリスタル製ダイヤルを備えた新しいモデルを発表した。8本のうち3本がこの形式で製造され、それぞれ異なるタッチが加えられている。

パテックやオーデマ ピゲといったブランドの修復師やコンサルタントとして長年従事したのち、デュフォー氏は1982年から1988年にかけてオーデマ ピゲのために5本の素晴らしいグラン・プチ・ソヌリの懐中時計を製作した。そのうちの1本が、クルマのドアに挟まれてボロボロになってしまったという不幸なエピソードがある。伝説によれば、この出来事が、デュフォー氏が自らの名を冠した時計をつくり、作品を信頼できる顧客に確実に届ける動機になったという。少なくとも、もうクルマのドアに挟むようなことは避けられるだろう。

Dufour Grande Sonnerie
フィリップに出品されるNo.7 ソヌリ。

マーケティングの勘所をしっかり押さえたデュフォー氏は、注目を集めるためにはマーケットにないものをつくらなければならないと考えた。世界でもっとも難しい複雑時計のひとつを腕時計の形にすることは、確かに重要なことだ。彼はムーブメントを小型化するために3年の歳月を費やし、ついに完成させたのがこの時計である。

デュフォー氏は、自分の業績についてウォッチメイキングの歴史のなかで特別なものでも秘密のものでもないと明言している。彼は伝統的なウォッチメイキングの基礎の上に立つことに大きな誇りを持っている。この時計は、初期のヴィクトラン・ピゲのエボーシュやほかのジュウ渓谷を出自とする時計メーカーによく似ている。操作は驚くほどシンプルで、リューズで2方向に巻き上げ、計時またはチャイム機構を作動させ、リュウズに仕込まれたボタンを押下することでミニッツリピーターを作動させるというものだ。

Dufour Grande Sonnerie
No.7のこの仕上げをご覧いただきたい。

もっとも驚くべきディテールのひとつは、この時計が2016年に仕上げられたということだ。この秋、フィリップス・ジュネーブでこれまで知られていなかった新作が登場し、この時計にまつわる研究に変更が生じたため、デュフォー氏が製造したデュアリティの総数についてネット上で議論が起きている。しかしソヌリに関してはそもそも8本のエボーシュしか製造されていない。それらはすべてケースに収められ、所在がすべて確認されている。

私は今年の初め、2本のデュフォー作のソヌリ(No.5とNo.7)を隣り合わせに、しかも同じコレクションから見るという、一生に1度あるかないかのチャンスに恵まれた。この“ユニークかつクラシック”なケースデザインと、一般的なクラシックケースデザイン、そしてフィリップスの研究で言及された“アップデート”ケースデザインの違いを目撃する絶好のチャンスでもある。

Two Dufour Sonneries
より伝統的なNo.5のソヌリを見ると、ムーン/ブレゲ針やブレゲ数字など、シンプリシティに多く受け継がれたデュフォー初期の美学が垣間見られる。ケースの右側には、“サイレント/サウンド”と“グラン/プチ”のセレクターを操作するスイッチがある。これはソヌリにとってもっとも伝統的なケースデザインであり、フィリップスに出品されるNo.7にも採用されたものである。

Dufour Sonnerie
No. 5のケース。

Dufour Sonnerie No. 7
フィリップスに出品されるNo.7 ソヌリ。

サファイアダイヤルは大胆な試みと言える。実際、デュフォー氏が手がけた時計のなかで、最もデュフォーらしくないデザインかもしれない(彼の製作本数自体が多くないとはいえ)。サファイアダイヤルを備えたNo.7は、ブルースティールの“ヘビースペードとムチ”型の針と、数字入りのアウタートラックを特徴としている。このサファイアダイヤルは、これまで見たなかでも特に視認性が低い部類だが、それゆえにデュフォーが部品のひとつひとつ(ダイヤル面も裏側も)を可能な限り最高の水準で仕上げていることを観察する貴重な機会を提供してくれる。

Dufour Sonnerie No. 7
No.5とNo.7の明らかな違いは(使用されている色を除けば)ケースバックにある。フィリップスのNo.8はオフィサーズケースバックでムーブメントを隠し、保護している。ムーブメントの裏側には、美しく流れるような、それでいて尖ったブリッジと、完璧なジュネーブストライプの施された巨大な平面が広がる。とはいえ、ほとんどの作動部はダイヤル側にレイアウトされているが、通常ソヌリはムーブメントのレバーやブリッジがあまり見えないデザインになっている。この時計は、彼が製作した時計のなかで唯一、オープンダイヤルとヒンジ付きケースバックを併せ持つモデルである。

Dufour Grande Sonneri
フィリップスのNo.7 ソヌリ。

No.5のケースバックはシースルーだが、ダイヤル側は使われている色以外にも微妙な違いがある。これは “アップデート”版のケースデザインで、ミドルケースにはスライドレバーがない。その代わり、ヒンジ付きベゼルの下にレバーが隠されており、クリーンなケースデザインに仕上がっている(その一方で、ケース構造は大幅に複雑化している)。

Dufour Sonnerie
今週末フィリップスで発表されるこのモデルの予想落札価額は、リシャールミルスーパーコピー優良サイト“200万ドル(日本円で約3億1300万円)超”という。狂気としか思えないが、たとえそれをわずかに超えた程度であれば、この時計としては破格値だろう。この時計のピンクゴールドバージョンは1995年にブルネイのスルタンに納品され、2021年にA Collected Man(ACM)が763万ドル(当時の相場で約8億3700万円)で販売した。いまはマーケット事情が違うため、この時計がどうなるかを推測するのは難しい。F.P.ジュルヌの史上2番目の腕時計は、ACMのデュフォーを上回り、独立系ウォッチとして史上最高額で販売された。F.P.ジュルヌの歴史にまつわるストーリー性が幅広い層に訴求したのかもしれない。いずれにしても、フィリップスは週末が終わってもトップの座を守り続けるだろう。

グランドセイコーからSBGH349 “氷瀑”が新登場

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グランドセイコーは、伝説的な自動巻きムーブメントであるグランドセイコー9Sを搭載したオリジナルウォッチの25周年を記念し、1998年当時の店頭で見かけたような37mmケースの限定モデル2種を発表した。その後、今年初めに新たな37mmサイズのエバーブリリアントスティール製ケースを採用したオマージュモデル、“SBGH347”を発売。このモデルは限定版ではなく、ハイビートの9S85ムーブメントを搭載し、新しい不規則なストライプ模様のアイスブルーダイヤルを特徴としている。そして今回、このケースサイズや素材が好みに合わない方のために、同じムーブメントとダイヤルを備えた40mmの高強度(ブライト)チタン製ケースの新オプションを発表した。

SBGH349
グランドセイコーの得意とする“優れたダイヤルをなじみ深いケースに収める”手法が光るこの新モデルは、ケースサイズが40mm、厚さ13mm、ラグからラグまでが46.6mmである。内部には自動巻きハイビートムーブメントが搭載され、3万6000振動/時の高精度を実現し、約55時間のパワーリザーブを誇る。またラグには穴が設けられており、ブレスレットの交換が容易になっている。パテックフィリップ コピー販売おすすめ優良サイトまたひとつ魅力的な新作として登場した本作の価格は101万2000円(税込)と手ごろであり、2025年1月に発売予定だ。

我々の考え
今年の初めに日本で行われたプレビューでこの新作を目にしたが、きわめて目を引くラインナップのひとつだと感じた。感想はさておき、グランドセイコーは優れたダイヤルバリエーションを次々と追加しており、コメント欄では37mm派と40mm派で意見が割れることが多いが(また議論が再燃するのが楽しみだ)、異なるケース素材で両方の選択肢が用意されるのは悪くないことだと思う。個人的には、40mmバージョンは厚みのある13mmケースとのバランスがよく、高強度チタン素材によってその厚みがうまく抑えられているように感じる。

基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション 氷瀑
型番: SBGH349

直径: 40mm
厚さ: 13mm
ケース素材: 高強度(ブライト)チタン
文字盤: ストライプ模様のアイスブルー
インデックス: ポリッシュ仕上げのアプライド
夜光: なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: 高強度チタンブレスレット、ワンプッシュ三つ折れクラスプ

SBGH349
ムーブメント情報
キャリバー: 9S85
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
石数: 37
クロノメーター: なし、平均日差+5秒~-3秒
追加情報: 耐磁性能4800A/m

価格 & 発売時期
価格: 101万2000円(税込)
発売時期: 2025年1月発売予定
限定: なし